痴漢山の怪 三(埼玉県上尾市) | コワイハナシ47

痴漢山の怪 三(埼玉県上尾市)

三度目の探索・取材。

二○〇九年四月の事。あるコンテンツ会社で、ホラー系のDVD企画を立ち上げた私は、撮影場所の候補として、手持ちの心霊スポットリストを見直していた。痴漢山は常にその名前の横に、「心霊スポット?」と注釈が書かれている状態で、優先度リストから除外してあった。しかし、仕事で撮るとなれば、有名所で新鮮味が無い場所より、こうした、地元の人間しか知らない所の方がいい。それに、自分の中では子供の時から因縁のある場所であり、今は通学路としての役目も無く、ただ人通りの無い寂しい場所でしかないという点も引っかかっていた。

自分が取り上げないと、知られずに消えてしまうような、決着を付けずに終わってしまうような、寂寥感に似た感覚を覚え、自転車で夜の二二時過ぎに出かけたのである。大分知らない道や建物が増えてはいたが、相変わらず痴漢山周辺は寂しく、ろくに街灯も無く、真っ暗だった。

驚いたのは、自転車を停め、ライトで近辺を照らしていると、すぐさま軽トラックがやって来て、どうかしましたか? と聞いて来た。私はスマホのケースにいつも会社の名刺を入れているので、それを差し出し、事情を説明した。

「へぇ、本書いてる人ですか……昔ここは通学路でねぇ、そうだね、ここはコースだったよねぇ。今? 今は何も。お宅をゴミの不法投棄と思ったのよ。多いんだ、家庭ゴミから粗大ゴミまで、捨てて行くのが……」

そう言って、軽トラに乗って来た男性は笑った。彼は痴漢山と隣接する田んぼの所有者で、ここ数年ゴミの不法投棄で困っているという。夜中に痴漢山近辺で車やライトを見ると、取りあえず見に来てみるのだという。

最近は通る人が少ないからか、痴漢の被害という話もあまり聞かれないようだが、他所の場所から良くない連中がやって来て、たむろしている事があるそうだ。

中には、明らかに無理やり連れて来られた風の女性が車に乗っている事もあり、何度か声を掛けた事があるという話だった。確かに街灯もろくに無く、暗くて人通りも無い、それでいて舗装道路だけはあるときたら、格好の犯罪ポイントになってもおかしくない。

ライトで更に周辺を照らしながらゆっくりと走る。一本奥の、例の道に入るとすぐに、ある物が目についた。お菓子と、ペットボトルのジュース、花。それらがひっそりと、まとめて道脇の草地を平らに均し、置いてあった。

ああ、ここではまだ、事件が起きているんだな。私は痴漢山の今の姿を見て、やはり良くない出来事を呼ぶ場所だと確信し、帰途についた。ここはいまだに現存する。

関連話
痴漢山の怪 その一(埼玉県上尾市)

痴漢山の怪 その二(埼玉県上尾市)

シェアする

フォローする