お化け屋敷でなすりつけ(東京) | コワイハナシ47

お化け屋敷でなすりつけ(東京)

枝原君と竹沢君の話である。

本来、見えなくていいものが見えたり触れたり殴れたりするようになると、更に色々なことができるようになるらしい。

枝原君達は、東京湾岸にある遊園地へ遊びに行った。

お化け屋敷で文字通り腰の抜けた竹沢君の回復を待って、「城巡りツアー」に挑戦することになったのだが、回復したばかりの竹沢君は次のアトラクションも嫌がった。

「もういいよ、怖いのは……」

「怖くないって!作り物なんだから」

「だから、そうじゃないのも見えるんだってば!」

「遊園地に来て遊ばないで帰るのは罪悪だぞ」

竹沢君はなおも食い下がったが、結局友人達に付き合うことになった。

友人達が歓声を上げて本来の仕掛けを楽しんでいるとき、枝原君と竹沢君はアトラクションとして用意されたもの、ではない別のものを見ていた。

「ねえねえ、ほらあそこに何かいるよ!」

「勘弁してくれよ、そーいうのは……」

「ほらほら、そっちにも!」

「だああああああああああ!やめろぉ!」

お化け屋敷のショックから回復したばかりの竹沢君は、げんなりとした表情で順路を進んだ。それぞれに違った意味で城巡りツアーを堪能し終えた一行が建物から出てきたとき、竹沢君はまたしても不調を訴えた。

「……首の辺りが、すごーく重い。枝原、俺の後ろに何かいないか?」

「竹沢さん、さっき子供が二人ほどいたのが見えなかった?」

「うん。見えた」

「首の辺りに誰かがしがみ付いてるのが見える」

「ひーっ。取れ!取ってくれ、枝原!」

「取れって言われてもねえ……」

枝原君は無造作に腕を伸ばすと、竹沢君の首筋辺りの空中をひょいと握る。

「これでどう?」

「……楽になったみたい。へえ、枝原って変な力持ってるとは知ってたけど、除霊もできるなんて知らなかったなあ」

「いや、除霊とかそーいうことはできないよ。俺にできるのは、くっついている〈もの〉をむしり取って、別のとこに移すことだけなんだな、これが」

「え?それじゃ今、首から取った奴は?」

「まだここにあるよ」

枝原君は、握ったままの拳を突き出してみせた。

「わっ!わっ!捨てろ!消散させろ!こっちへ持ってくるな!」

「だから、そういうことはできないんだってば……しょうがないなあ」

枝原君は周囲を見回した。幸せそうにはしゃいでいる親子連れの姿が多く目に映る。枝原君は、若い両親に連れられて通りかかった幼児の背中に拳を突き出した。

「今の人、知り合い?」

「全然知らん。とりあえず、竹沢さんの首筋の奴は今の子供になすりつけといたから、少なくともこれで僕らは安全になった。めでたしめでたし」

「……それじゃあ、今の子はどうなるんだ?」

「さあ。どうにかなるんじゃないかな?でももう他人ごとだから知らない」

教訓。異能力者がすべて自己犠牲の精神に満ちた善人だと思ってはいけない。

一九九一年元日に東京湾岸の遊園地に行ってから運気が傾いてきた、という心当たりのある方、それは枝原君の仕業である。

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