八代のとある神社の話。車を停めてひと眠りしていた。介護施設に勤めていた岩野さんは休憩のたびにこの神社の境内の駐車場に来ていた。
寝ていると地震のような揺れが起きた。
「何だ何だ!」
起き上がって車の窓から外を見た。
そこには3歳くらいから10歳くらいまでの子供達が車に乗ったり窓を叩いたり、木に登ったりと、遊びたい放題だった。
そしてその子供たちはみんな霊だった。はっきりとそれはわかったという。
岩野さんは恐ろしくなって、すぐその場から逃げた。
どうやらその神社には座敷童のように子供の霊が集まる場所のようだった。
その後、岩野さんの家の中でも怪奇現象が起こるようになった。
玄関のドアがひとりでに開いたり、障子がスッと動いたり、お風呂場のドアがキイーっと開いたり。明らかに誰か見えない人が住んでいる。介護施設でも女の子の霊が出たと騒ぎになっていた。
だが岩野さんは慣れているので、お祓いなどはしなくていいのだという。子どもの霊はいたずら好きなので、遊びたいから出て来ると語ってくれた。
四十六 立神峡 耳に残る声(八代郡 氷川町)
立神峡は岩場から飛び込み出来たりと、小中学生には人気の場所。
だが何人か溺れて亡くなっているとの話もある。
中村さんは中学生の頃、友だち数人と自転車で行った。県道から山道に入って走るとき、中村さんが1番後ろだった。
その時背中から違和感を感じ急に寒気がしたという。後ろを振り返ると誰もいない。
すると耳のなかで「シュルシュル」と何かが回転する音が聞こえた。耳鳴りかなと思ったが、金縛りの時に、よくある音だった。音が聞こえだした時から首が痛くなり重くなった感じがした。
「シュルシュル」
耳に鳴る音が、よく聞くと言葉になっているような気がして集中して聞くと、
「遊ぼ、お兄ちゃん」
と聞こえてきた。
小さい子供で、男の子か、女の子かは分からない。はっきりと声になり聞こえたと思った時に、
「ドスン!」
自転車の後ろに何かが乗ったのを感じた。
後ろを見ようとしたが、首が後ろを向けない。首が固まってしまった。
「誰? 遊ばないから、降りて。ここは君の場所じゃないよ」
と恐々話した。でも後ろの子供は、
「お兄ちゃん、遊ぼ」
とずっと後ろで言っていた。これはもう逃げるしかないと自転車をこいだ。
前の友達は見えないくらい先にいる。急いで追いつこうとこいでも、なかなか進まない。子供というより、大人を乗せたような重さだった。
すると後ろの声が、
「遊べ、止まれ」
と、大人の声になった。男の人の声だった。
その瞬間、後ろがグーんと重さで下がり、前輪が浮き、中村さんは転んだ。
慌てて周りをみたけど誰もいない。
心配した友達が遅いから見に来た。中村さんは足や肘が擦り傷だらけで、泳ぐのをやめ、写真を撮る係になった。
中村さんは友達からカメラを預かり、みんなが遊ぶ写真を何枚か撮った。
友達とその後写真屋さんに持って行き、現像してもらったののなかに、岩場の上で撮った写真がない事に気づいた。
後で友達が写真屋さんに尋ねると、
「あれは見ない方がいい……」
と言われたそうだ。何が写っていたのか、処分されていてわからないという。