天草一号橋 瞳の中の女(熊本県天草市) | コワイハナシ47

天草一号橋 瞳の中の女(熊本県天草市)

天草1号橋を渡った付近に幽霊が出るというのは、橋ができてしばらく経ってからのことだった。

橋が架かるまでは、元は船で島々を渡っていたので、ひょっとすると水死した遺体が浜や岸壁に流れ着いたことも多かっただろうから、そういった魂が見えることはあるだろう。

1936年に念願の橋がかかる。三角町から大矢野島、そして天草の5島を繋ぐ天草5橋が完成した。交通輸送が可能になり、観光も増え発展していった。

有明海を渡る橋というのは、実に爽快だ。

島々の絶景を見ながら、ドライブするためだけに天草観光に行く人も多い。

大学ラグビー部のみんなで、天草の温泉に行った時だった。

溝田さんは2年生。大きなバスで30人位だったか、温泉地に着いた。練習の後からのスタートだったので、天草1号橋を渡る頃にはもう真っ暗だった。

隣に座っていた女子マネージャーのRが、

「あ!」

と声をあげた。

溝田さんは元々霊感があり、やっぱり見たんだな、あの橋の所に立っていた女性を……と感じていた。

「何か見た?」

「あ、いえ……」

Rはおとなしい子だったので、ただ目を伏せるだけだった。

温泉の後、宴会場で先生やメンバーで騒いでいると、Rの姿が見えない。別のマネージャーに聞くと、バス酔いしたらしく部屋でふせっているという。

それから一週間して、Rはやっと部活に来た。だが顔色が悪く溝田さんはいやな予感がした。

すぐに部室に連れて行きRの話を聞いた。

「実はあの1号橋渡ったとき、白い女の人の姿を見たんです。それから急に気持ち悪くなって、頭が痛くなり、吐いたり……病院ではウイルス胃腸炎って言われたんですけど……薬飲んでも効かなくて、まだむかむかするし、とにかく涙が出るんです」

とRはぽろぽろと涙を流した。

「それから少ししたら、金縛りにあって、白い女の人が上に乗ってきたんです。その人は起きてても目をつぶっていても、ずっと目の前にいるんです! 信じてくれないかもしれないけど」

「わかってるよ。Rさん見たときからその話、信じるよ」

溝田さんはRの目をじっと見つめた。

「Rさん。怖いかもしれないけど……Rさんの両目に女の人が映ってる。白い服で痩せこけて髪の長い女の人が。僕に向かって手を動かしてるよ。その女の人でしょ?」

「えー! そ、そうです!」

Rはその場で泣き崩れた。だが溝田さんはRの肩を抱きかかえ、

「Rさん、キツいけど目を開けて!」

Rは必死で目を開けてくれた。その瞬間、溝田さんは言った。

「さっきからお前を見てるんだよ! つまらん事すんな、出て行け、早く帰れ! 二度と来るな! これ以上許さんぞ!」

と、その目の中の女に強く言い放った。

するとRはスーッと意識を無くすかのように力が抜けた。Rの目を見ると、その女の人は消えていた。Rはしばらく休んで帰ったが、その後は大丈夫だったという。

溝田さんはそれから心霊現象に悩む女子達からラブレター並に相談の手紙をもらうようになった。

天草に橋が架かると、そこから飛び降り自殺をする人も多かったという。そうした地縛霊が憑りつくケースもあったようだ。

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