七重浜海水浴場の記憶(北海道北斗市) | コワイハナシ47

七重浜海水浴場の記憶(北海道北斗市)

日本の海難事故史上、最悪の結果をもたらした洞爺丸事故の犠牲者が多く流れ着いた場所として知られるこの海岸は、多くの目撃証言が上がる場所でもある。

ある夏の夜、藤田さんは友人二人とともにドライブに出かけた。

特に当てのないドライブである為、適当に車を走らせていた。

突然、友人のヒロシが花火をやろうと言い出す。

コンビニで適当な花火を買い、花火ができそうな場所を探す。

「この辺なら良さそうじゃね?」

車を駐め、海岸へと降り立つ三人。

ひとしきり花火で盛り上がった。

「で、この後どうするよ?」

「パンツで泳いじゃうか?」

その場のノリでヒロシは夜の海に入っていった。

負けじと二人も服を脱ぎ後に続く。

「やっぱ夜の海は寒いな」

適当にはしゃいだ後、三人は砂浜に戻って煙草を吹かした。

「どーすんのよこれ、身体拭かないと服も着られないぞ」

「全くだ」

パンツ一丁の三人は大笑いする。

そのとき、雲間から月の明かりが差し込んだ。

辺りが青白い光に照らされる。

「んっ?あれって何よ?」

カツヤが波打ち際に何かを見つけた。

三人はぞろぞろと確認に向かう。

眼前に転がっているのは水死体であった。

既に息絶えていることは、少し離れた場所からでも分かる。

「お、おい、警察!いや、救急車か?」

動揺する藤田さんに促されるまま、カツヤは脱ぎ捨ててあった服からスマホを取り出した。

「ダメだ、通じない……」

「どうすんのよ、これ」

冷静な判断が付かないでいると、急に風がざわつき始めた。

無意識に周囲を見渡した藤田さんは言葉を失った。

彼らの周囲には十数体の遺体が転がっていた。

ヒロシとカツヤも、藤田さんの反応でそれに気付く。

「な……何よ、どーなってんのよ、これ」

先程、海に入る前にはここを通っていたはずである。

これだけの数の遺体があったとすれば、誰一人気付かないはずがない。

しかし、現実に目の前には存在しているのである。

「と、兎に角だ、通報するんだ。それしかない」

もう一度それぞれがスマホを取り出すが圏外のまま変わらない。

結局、電波の届くところまで車で戻るか、手近の民家を探して通報してもらうしかない。

急いで服を着ていると、藤田さんの視界の隅で何かが動いたような気がした。

反射的にそちらに目を向けると、一番近くの水死体が起き上がろうとしていた。

声にならない悲鳴を上げ、そのままへたり込んでしまった。

気付くとヒロシとカツヤも同様に腰を抜かしている。

水死体は藤田さんの元へにじり寄ってくる。

伸ばされた手が藤田さんの腿に触れようとしたとき、水死体はその姿を消した。

周囲を見渡しても何処にも死体はない。

三人は言葉を発することもできず、首を振り合うことでしか意志の疎通ができなかった。

後日、自分達がいた場所が海難事故の犠牲者が流れ着いた場所だと知った。

彼らは揃って花束を買い、そっと海に流した。

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