H川の宙ソラ(北海道) | コワイハナシ47

H川の宙ソラ(北海道)

道南にH川という長閑な町がある。

一時期、UFOが現れたという話題で、某国営放送が取材にきたこともある。

町民による目撃情報は実に数多い。

田代さんは農業を営んでいる五十代の独身男性。

ある夏の日、薄暗くなりかけた頃に一日の仕事を終えた。

ふーう、と大きく腰を伸ばし、自然と顔は空を見上げた。

上空には白く発光する二センチ大の球体が浮かんでいる。

(あー、あれがUFOとかいうやつか……)

話には聞いていたが、特に興味などは持ち合わせていない。

仕事道具を手際よく軽トラックに乗せ、家路に就いた。

翌日も仕事を終えると明日の天気が気になり、空を見上げた。

(こりゃあ、一雨くるな)

そのとき、雲に覆われた空から、一体の光が飛び出してきた。

それはグングンとこちらに近付いているように思える。

田代さんの上空で三メートル位の大きさになるまで近付くと、突然静止した。

(これはでかいわ。みんなが騒ぐのも分かるわ)

そう思った瞬間──家で夕食を食べていた。

途中の記憶がすっぽりと抜け落ちているが、田代さんの性格上そんなに気にはならない。

慣れた日常であるから、自然と帰ったのだろうと決め込んだ。

翌日の正午頃、雨足は強くなり始める。

仕事も一区切りも付いたことから、家に帰ることにした。

軽トラックに乗り込み、エンジンを掛けた瞬間、周囲が光に覆われた。

スポットライトなど比にならないほどの強い白光。

どうせまたあのUFOだろうと、車の窓を開けて空を見る。

──思わず息を飲んだ。

車の上空三メートルほどの距離に、全長二十メートル以上の楕円の白い光が浮かんでいるのである。

その中で、緑や赤や青の小さな光が忙しそうに動き回っている。

驚きの余り、暫くそうしていた。

見慣れてくると、次第に頭が冷静になっていくのを感じた。

周囲を照らす光は、依然として強いものである。

その光の中、UFOを見続けたり、中の小さな光を見つけられるものだろうか?

通常は目が眩んで、何も見えないんじゃなかろうか?

──その瞬間、田代さんは家にいた。

茶の間に座っていたのである。

夢でも見たのだろう、と思うと、家中が白い光に包まれた。

そして、気付けば翌日の朝になっていた。

田代さんはそれからも大きさや形は違えども、数多くのUFOと遭遇している。

最近気になり始めたことは胸部や背中に、横一文字の一センチ大の傷が数多く残されていること。

痛みなどはないが、全て一ミリほど盛り上がっている。

何らかの関係がありそうで、どうにも落ち着かないそうだ。

いったいこれから、自分はどうなってしまうのだろう──。

不安は一向に晴れる見込みがない。

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