白扇の滝を舞うモノ(北海道恵庭市) | コワイハナシ47

白扇の滝を舞うモノ(北海道恵庭市)

恵庭市から道道を支笏湖方面に進むと、この滝の鑑賞スポットに辿り着く。

付近には合わせて三つの滝があり、癒しを求めて訪れる人の数は多い。

石橋さんは滝を巡るのが趣味である。

遠出もするが、連休などが取れないときには、近場のスポットをよく訪れる。

何をするでもない。ただただ滝を眺めて、癒された頃に帰宅するのが常であった。

その日は白扇の滝を訪れた。

自分の中での絶景スポットに陣取り、ずっと眺め続けていた。

無心でただ滝を眺めていると、日々のストレスなどどうでもいいように思えてくる。

(やっぱ、滝はいいよなぁ)

しみじみとそう感じていると、落下する水の流れの中から、白い線が飛び出した。

白い線は緩やかに波打ち、宙を泳ぐ。

(ふーん)

無我の境地に近い心持ちだった石橋さんは、その姿をぼんやり見つめていた。

白い線はやがてぐるぐると旋回し、天に向かうように登りその姿を消した。

それから五分ほどすると、また滝から白い線が飛び出した。

再びそれを眺めていたが、白い線は旋回すると方向を変え、石橋さんの顔に向かって飛来した。

(お、お、おっ……)

唐突に目前に迫ってきた。

今度は反射的に顔を背けてしまう。

すぐさま振り返りその姿を追うと、また天へと消えていった。

(今の……鱗みたいなのがなかったか?)

記憶を辿り、現れてからの姿を思い出す。

立派な顎、鱗、尾鰭おひれのようなもの。

手足は確認できなかったが、絵で見る龍に酷似しているように思えた。

(マジかよ……)

今度は集中して滝の流れを見つめる。

しかし、それからは一向に飛び出してこない。

三十分以上も一瞬も逃すまいと目を凝らし続けていると、流石に目が疲れてきた。

一度目を閉じ、瞼を軽く擦り続ける。

『ドブンッ!!』

そのとき、大きな何かが滝壺に落ちたような音がした。

慌てて目を開け、滝壺のほうを見やる。

そこから一直線に石橋さんの顔を目掛けて飛んでくるものがあった。

その姿をしっかり捉えようと、瞼をぐっと見開く。

(あっ……あっ……あぁあああ!!)

──それは先程までの龍ではなかった。

坊主頭の男の顔が口を大きく開け、見開いた眼球は石橋さんを見据えている。

胴体は蛇とも龍とも判断できない鱗を持ち、波打つ尾鰭は推進力を保っているように思えた。

ギリギリのところで何とか身を躱すと、それは真っすぐ天に伸び、やがて小さくなって消えた。

暫くして我に返った石橋さんは、そそくさとその場から立ち去った。

未だに彼は滝巡りを続けている。

しかしこの場所だけは、彼の滝巡り候補から除外されることとなった。

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