展望閣の怪(北海道小樽市) | コワイハナシ47

展望閣の怪(北海道小樽市)

展望閣という廃墟は、小樽の高台に現存する。

過去に火災で人命が失われたという噂から、心霊スポットとして有名な場所である。

安達さんは深夜零時を回る頃、友人三人と一緒にここを訪れた。

まだ二十代前半。血気盛んな時期である為、度胸試しという名目であった。

「俺の先輩、ここの地下のトイレに閉じ込められたことがあるんだってよ」

「マジか!!そいつダセェな!!」

車から降りた四人は、意気揚々と建物の中に入っていく。

建物は漆黒の闇に包まれていた。

取り出した懐中電灯の明かりが、ぼんやりと景色を映し出す。

剥き出しになったコンクリートの壁や天井。

ガラスのない窓枠。

結構な量の落書きがあちこちに見られる。

「大したことねぇな、全然怖くねぇじゃん」

安達さんは先頭を切って、ずんずんと進んでいく。

一階部分を一通り回った後、地下へと進路を決めた。

「おい、足元照らせって!あぶねぇんだって!」

段差には小さな瓦礫が転がっている為、足を取られやすい。

「うぉっ!?」

似つかわしくない裏返った声を聡が上げた。

皆で、気持ち悪い女みたいな声を出すなと大笑いする。

「ちっ、違うんだって!」

聡は足首を誰かに掴まれた、と言い張る。

そんな訳はないだろう、と周囲を懐中電灯で照らすが、怪しいものは一切見つからなかった。

(聡のやつ、俺らをビビらせようとしてるな)

真剣に訴える聡を宥めながら、閉じ込められた人がいるというトイレに辿り着く。

「誰か入っていますかぁ?」

ふざけてドアをノックする。

『……トン、トンッ』

中からドアが叩かれた音がした。

一瞬の静寂の後、皆で顔を見合わせて頷いた。

「誰かいるんだろ、オラァ!!」

勢いよくドアは開かれたが、中には誰もいない。

駐車場に車は一台も駐まっていなかった。

ここT望閣に、徒歩で来るとは考えにくいが、誰かが仕込みで隠れている可能性もある。

「どっかに隠れるとこがあるんだって」

隆志がトイレの中に入って、あちこちを探す。

──ダンッ!!

ドアが勢いよく閉まった。

「ふざけんな!開けろ!開けろって!!」

隆志は怒声を上げるが、安達さん達の仕業ではない。

トイレの中と外から開けようとするが、ドアノブはぴくりとも動かない。

「ふざけんな!畜生!畜生!」

どれくらいそうしていたのだろう。

わめき立ててはいるものの、これだって隆志の仕込みかもしれない。

だが隆志の狂乱ぶりは迫真に迫り、ふざけているようにも思えない。

何より、隆志を見捨てていく訳にはいかない。歩いてこられる場所ではないのだ。

安達さん達の必死な思いが通じたのか、突然ドアが開いた。

そこには、生気を失った表情の隆志が呆然と立ち尽くしていた。

隆志は何を話し掛けてもぼんやりしていて、要領を得ない。

その後、何とか車まで連れ帰り、猛スピードでその場を後にした。

後日、安達さんの元へ、一通のメールが届いた。

送信元は隆志である。

本文は一切なし。画像だけが添付されていた。

開いてみると、隆志の上半身を隠すように、薄白い巨大な光球が一個映っている。

光球から透けて見える隆志の表情は虚ろだ。

周囲から察するに、展望閣のトイレだと思われる。

あのとき、撮影などした者はいなかった。

這々の体で車まで逃げ帰ったのだ。

そして何より気になったのが……。

──隆志と安達さんを除いた残り二人の友人が、その画像に写っていた。

彼ら二人の顔に表情はない。

ただ、画像下部の暗闇から生えるように、その顔だけを浮かび上がらせていた。

安達さんは未だにこのメールを消去できないでいる。

友人達にも、この件は秘密にしたままである。

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