春志内トンネルの奇(北海道旭川市) | コワイハナシ47

春志内トンネルの奇(北海道旭川市)

旭川で有名な神居古潭(カムイコタン)の近くに、このトンネルは存在する。

事故が多発することから注意書きの看板も数多く見られるが、依然として事故の件数は減らない。

また、奇妙な目撃情報も数多く存在する。

川口さんは仕事でこのトンネルをよく通っていた。

当然、事故が起きやすいことも知っている為、走行時は十分に注意している。

ある冬の日のこと。その日は朝から酷く冷え込んでいた。

トンネル内はブラックアイスバーンになっていることを想定して、スピードは十分に抑えていた。

トンネルに入ると間もなく、事故現場に遭遇する。

双方の車から人が降りて話し合っているようなので、大したことはないらしい。

事故車両を躱し、仕事先へと進んだ。

あともう少しでトンネルを抜けそうなところまで来たとき、急に人影が横切った。

慌ててブレーキを踏むと車はスピンし、対向車線側で漸く停まった。

ふう、と大きく息を吐いた。危うくはあったが、辛うじて事なきを得た。

このとき、先程の人影のことを思い出した。

衝撃がなかったことから、轢いてはいない。

……いや、急に人影が現れ、目の前を横断したのだ。

予め人がいたのであれば、事前に気付いていたはずだ。

記憶を辿るうち、先程まで人影だとばかり思っていた存在が、鮮明な映像で呼び起こされる。

アイヌ衣装を纏い、太めの鉢巻のような物をしていた。

紺色の衣服や鉢巻に、白い線上の文様までがはっきりと見て取れた。

ここをそんな格好で横断する者などいるはずがない。

そう思った瞬間、激しい衝撃とともに、身体はハンドルに叩きつけられた。

朦朧もうろうとする意識の中、必死の力で身体を起こすと視界に異様な光景が飛び込む。

窓越しに複数人のアイヌ人がこちらを覗き込んでいる。

『……グォ……カゥ……ワナ……』

低い声であるが、窓越しとは思えない声量で何かを話している。

四方から聞こえるので、車を取り囲まれているのかもしれない──と思った瞬間、意識は途絶えた。

気が付いたときには病院にいた。

車は大破していたが、頸椎腰椎捻挫と肋骨二本の骨折だけで済んだ。

川口さんは退院した後も、このトンネルを通ることが多々ある。

時々、人影を見ることはあるが、反応しないようにしてやり過ごしているという。

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