トイレに浮かぶ手首(徳島市城南町) | コワイハナシ47

トイレに浮かぶ手首(徳島市城南町)

私は徳島県にある、徳島市立八万小学校に通っていた。創立100年を超える古い小学校だけに、数多くの学校怪談が語られていた。そんな私も、小学生2、3年生の頃、奇妙なモノを見たことがある。これはその時の体験談だ。

その日、学校では、帰る前の清掃が行われていた。基本的に真面目だった私は、いつも黙々と掃除をしていた。

「わーっ、わーっ!」

ヒステリックな声が聞こえてきた。教室の横の便所を清掃している班の連中が叫んでいる。

「まるで、動物やな」

そう呟きながら、掃除の手を止めた私は、隣の便所まで足を運んでみた。

「わぁぁわああぁぁ」

女子が口をあぐあぐさせながら、半泣きで便所から出てきた。お調子者の男子数名が走り回っており、お祭り騒ぎになっていた。

「お化けや、お化けが出とる」

大声で喚く同級生の男子。もうその顔は喜んでいるのか、怖がっているのか不明であった。

私はトイレから出てきた同級生を引き止め、冷めた口調で訊いてみた。

「お化け? 昼間やど」

「ほんまやって、間はざま、おまえも奥の便器覗いてこいや」

「なんでまた、そんな妙なもんを見なあかんの……?」

「はぁん、お前、怖いんか」

「怖くないって」

「じゃあ、いけや」

そう促され、私はアンモニア臭を我慢しながら、便所の奥にある便器に向かった。

「行けばええんやろ」

背後で女子たちが不安げに見守っているのがわかった。

やれやれ、と思いながら、ずんずんと奥に進んだ。奥の便器の手前まで行くと、数人の同級生が立っていた。

「何があるんや」

「まぁ、見てみぃ」

私がそっと覗くと、便器に──手首が浮いていた。確かに人間の手首である。

(なんで、こんな場所に人体の一部があるんだ。そもそも何故手首なのか?)

一応水洗だが、和式トイレの便座の水がたまる場所から、這い出るように〝手首〟が覗いている。──何度見ても手首であった。水に浸かっていたからであろうか、2倍から3倍ぐらいに膨らんでいるし、皮膚は破れ白濁化している。

「ほんまやな、手首や」

「間、ほんまやろ、どうしたらいい?」

既にこの時、心霊マニアとしてクラスの中で有名であった私は、同級生たちに取り囲まれ、対処を迫られた。

「そうやな、とりあえずこうするか」

そう言って、便器の排水弁を足で押した。勢いよく水が流れ、手首はくるくると回って流れていった。

「これで、終わりやな」

「あぁ、そうだな」

解決したわりには、不可解な表情の同級生たち。今でも時々考えるのだが、あの手首はなんであったのか? 何故、手首であったのか?

不可解とは加速していくものである。

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