岐阜のお化け屋敷(岐阜県) | コワイハナシ47

岐阜のお化け屋敷(岐阜県)

2012年、私は岐阜の友人たちと柳ケ瀬商店街でお化け屋敷をプロデュースした。

東日本大震災に伴う関東地方の計画停電により、請け負っていた編集業務が続行できなくなり、Macを車に数台積んで東京電力圏から脱出した我々亀山社中を迎えてくれたのが、岐阜の人たちであったからだ。

期日までに仕事を完遂するため、あてもなく関東から飛び出した我々。車中でかみさんが私に聞いた。

「どこに行くの? 編集作業を続行しようにも、仕事する場所もないでしょ」

「岐阜に行く! 岐阜には吉村さんがいる」

「突然行ったって何もしてくれないよ」

この後、私がなんでこんなことを言ったのかわからないが、妙な確信があったのは事実だ。

「いや、岐阜に行けば吉村さんがなんとかしてくれる」

私のこの一言で亀山社中ことタートルカンパニーは岐阜に向かい、吉村さんの紹介で地元の方から事務所を貸してもらい、編集業務を完了することができた。

その後、その事務所は株式会社山口敏太郎タートルカンパニーの東海支店となり、その年の夏「口裂け女祭」が開催され、中沢健監督の「口裂け女 VS Xマン」という自主映画が製作された。

この流れを受け、岐阜の町おこしとして計画された「柳ケ瀬お化け屋敷」を私がプロデュースすることになったのだ。

「ひょっとすると、失敗するかもしれん」

吉村さんの言葉に私も相槌を打った。

「確かに危ないかもしれませんね」

この人がほとんどいない商店街で、お化け屋敷が成功するのだろうか。このプロジェクトが開始する直前、筆者が見込んだ人数は1万人であった。

ところがどっこい、蓋を開けてみると毎日のようにマスコミで報道され、押すな押すなの大賑わいとなり、1万8000人という大きな成果を収めたのだ。

「奇跡が起こった!」

「経済維新や!」

この柳ケ瀬の奇跡に人々は狂喜乱舞した。

だが、お化け屋敷だけに度々奇妙なことが起こった。

一番怖いと言われた場所は、軍人マネキンのコーナーであった。私は本物の軍服を買ってきてマネキンに着せていたのだが、ここで頻繁に奇妙なことが起こる。

口裂け女役で度々お化け屋敷に入っていた牛抱せん夏は、この軍人マネキンの近くで度々幽霊を目撃しているし、このお化け屋敷の責任者(お化け屋敷長)をやっていた作家・巨椋修もここで奇妙な体験をしている。

「お化け屋敷長、軍人の服が脱げました」

お化け役のアルバイトから度々報告を受け、巨椋さんはよく軍人マネキンの上着を着せていた。

「よし、これでよし」

毎日のように上着が脱げるのだが、ある時などはズボンが脱げてしまった。

お客さんの悪戯の可能性も否定できないが、この付近はお化けに追いかけられる場所であり、ズボンを脱がす悪戯などやっている暇はない。

では、いったい誰が脱がしたのか。

最終日が近くなったとき、服を軍人マネキンに着せながら、

「お前ともこれで最後だな」

と声をかけたところ、

「うわっ!」

そのマネキンの指が自分の服に絡みつき解けなくなった。

「わわわわわっ!!」

必死に振りほどいた巨椋さんであったが、なんだか軍人マネキンから、さよならと言われた気がしたという。

また、何故か誰もいない時間よりも、昼間のお客さんで賑わっているときに限って、

「目には見えないけど、人の気配を感じたね」

人影ではなく、〝何か白っぽいモノ〟が移動しているのを何回か目撃したと、巨椋さんは証言している。

念のために言っておくが、彼はオカルトの妄信者ではない。むしろ、懐疑的な視点から幽霊を捉えてきた人物である。そんな人物が霊のようなものを感じたと証言しているのだ。

また不思議なことに、お客さんが落し物する場所は大概この軍人マネキンの前であった。

よくよく思い返してみれば株式会社山口敏太郎タートルカンパニーの東海支店に軍服が届けられた時、かみさんが異常に怖がり、夜の8時にもかかわらず設置工事中のお化け屋敷まで自転車で届けたところ……。

──突然、嵐のような大雨になったというのだ。

英霊もこのお化け屋敷には参加してくれたのであろうか。

また、お化け屋敷の導入部分に、私は招福の可能性を信じて「本物の座敷わらしが宿っている人形」を2体設置した。

この座敷わらし人形は、市内のうつぼ屋という喫茶店の奥さんが所有しているもので、お店の看板人形であった。その子たちを無理を言って借りてきたのだ。

「この人形がいる限り、絶対に商売は繁盛する」

そう言いながら、私は人形を2体設置し、近くにはひな人形や小さなアンティーク人形を置いた。だが、このアンティーク人形が曲者であった。

かなりの寂しがり屋らしく、2体の座敷わらし人形に段々と擦り寄っていくのだ。

「あれ、おかしい。朝置いてあった場所と違うよ」

そんなことがよくあった。

朝にはやや離れた場所に置いたあったアンティーク人形が、夕方には座敷わらし人形の肩にもたれかかっているのだ。

この人形に対してバイトのK君が悪戯をしたことがある。──人形の裾をめくって中を見たのだ。

勿論、単なる悪ふざけのつもりであった。

「おいおい、呪われるぞ」

周囲の声にK君が苦笑いした。

「まさか、止めてくださいよ」

だが予感は的中する。

その後、彼はバイク事故を引き起こし、耳の裏を数針縫ったのだ。

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