おばあちゃんの鈴の音(熊本県葦北郡芦北) | コワイハナシ47

おばあちゃんの鈴の音(熊本県葦北郡芦北)

芦北は熊本の中で最も海が美しく、自然が多く、鹿児島にほど近いので熊本市内や北部の方、阿蘇の方ともまた違う。温暖で人柄も良い人が多い。

豊さんはこの芦北に住むお婆ちゃんの所へ頻繁に遊びに行っていた。孫の中でも豊さんを1番可愛がってくれ、信仰心が厚く、お寺や神社によく行く人だった。

そのたびに豊さんにお守りを買ってきてくれていた。特にお気に入りが、金と銀の大きな鈴だった。豊さんはこれを「お婆ちゃんの鈴」と呼んでいた。

社会人になり熊本を離れてしまった後、お婆ちゃんの癌が発覚してしまった。

きっと治ると思いこんでいて、豊さんはお見舞いに行っていなかった。仕事も始めたばかりで忙しかったから。

「お婆ちゃんが危篤だから帰ってきなさい!」

突然実家から連絡が入った。

仕事を休み、急いで帰ったけれど、高速道路の鳥栖インターチェンジが工事中だったので迂回したため、お婆ちゃんの最後に間に合わなかったのだ。

お通夜、お葬式、あれだけ好きだったのに涙が出なかった。

豊さんはお婆ちゃんが亡くなったと思えなかったから。

本当に数年間は実感がなく、残されたお爺ちゃんに会いに行っても、お婆ちゃんは旅行に行ってると思い、いつも玄関ばかり見ていた。家族も少し豊さんを心配していた。

ある夜、自宅で寝ていると、「お婆ちゃんの鈴」が鳴った。

「シャンシャンシャン」

姿は見えないけれど、その時お婆ちゃんの気配を感じた。

(おばあちゃん?)

起きようとしたけれど力が入らない。

すると頭の上から、

「ゆうちゃん、ここにいるよ、あの鈴をずっと持っててくれたんだね、ありがとうな」

はっきりとお婆ちゃんの声が聞こえた。そして優しい声で

「お婆ちゃんは、ずっと一緒におるよ」

豊さんは声をあげた。

「お婆ちゃんはどこに行ったの?」

「何処にも行かないから、また芦北に来てね、ありがとうな」

その時、鈴がシャンシャンとなり気配が消えた。

同時に力が入り、起き上がった瞬間に涙がこぼれ、初めてお婆ちゃんの死に号泣した。そして、この鈴は必ず部屋の見える所に置いているそうだ。

また、シャンシャンと鳴ったらお婆ちゃんに会えそうで。

豊さんのお婆ちゃんはお通夜、お葬式には沢山の人が集まり、3号線が渋滞するほどだった。

あんなに人に愛された人は見たことがない。

最高位のお坊さんが福岡から沢山弟子を連れてくるほど、相当徳の高い人だったようだ。

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