生き人形(大阪府) | コワイハナシ47

生き人形(大阪府)

私は子供の頃から、オカルトマニアであり、オカルトやホラーを扱う作家になりたいと願い続け、その職業に就いているのだから、幸せである。

それゆえに、子供の頃に慣れ親しんだ有名人に会うと嬉しくてたまらなくなる。

稲川淳二さんもその1人だ。年に何度かはお仕事をご一緒させていただくのだが、私が立案し関西テレビに持ち込んだ番組「怪談グランプリ」でも審査委員長をやっていただいている。

その稲川さんの十八番の怪談と言えば、──生き人形である。

この怪談、ある人形が関係者に不吉な出来事を次々引き起こすという物語である。

聞くだけでも障りがあると言われている話だが、限りなく恐怖を愛する私は学生時代から大好きであった。

この生き人形の話が、朝日放送のワイドショーで取り上げられたとき、数々の怪異な現象を引き起こし、放送事故になったと言われているのだ。

「どうも、お疲れ様でした」

「山口先生、お疲れ様でした」

その日、ハイヒールリンゴさん、モモコさんがMCをされている「ビーバップハイヒール」に出演した私は、スタッフに尋ねた。

「あの、ABCと言えば、稲川さん伝説のひとつである、生き人形の話です。事件のあった場所って……」

スタッフの目が悪戯っぽく輝いた。

「さすが、よくご存知で、このスタジオの下階がそのワイドショーが収録されたスタジオですよ」

「まじですか、ちょっと覗かせてください」

私はスタッフと一緒に、生き人形が怪異現象を起こしたスタジオに入ってみた。微かに空気が澱んでいた。

(ここが、あの伝説のスタジオか……)

私の興奮はピークに達した。

「ところで、まだ妙なことは起こるの?」

スタッフはキョロキョロと周囲を窺いながら、声を潜めた。

「実はまだお札が貼ってあるんです」

「まじですか?」

私はスタッフの案内で古びたお札の場所まで行き、それを確認した。

古いお札をまじまじと見ながら

「このお札を剥がすと、どうなるんですか?」

スタッフの顔色が変わった。

「やばいですよ。男の子の声がマイクに入るんですよ」

「おおっ、男の子ですか、やっぱり」

実は生き人形がワイドショーをパニックに陥れたとき、怪しい男の子がスタジオで目撃されたというのだ。しかも、生き人形は女の子であり、相方の男の子人形を探しているというのだ。となると、その男の子の霊とは生き人形の相方なのだろうか。

(あぁ、伝説は本当だった)

妙な感動をしながら、私は宿に向かった。その宿でゆっくり感動を思い返しながら、眠りについた。

真夜中のことである。

私は突如目が覚めた。──誰かが室内にいる。

そんな違和感を覚えたのだ。

(誰だ、誰だ、泥棒か)

なんとも言えない不安が私の心を曇らせた。この暗闇の中で誰かが部屋の隅から様子を窺っているように思えたのだ。

「……」

数秒間が数時間にも感じられた。その瞬間、私は声をあげた。

「わぁぁぁぁぁ!!」

──手首を掴まれたのだ。

何者かがベッドからはみ出ていた私の手首をがっしりと掴んだのだ。確かに誰かが手首を強く強く掴んでいる。

「ぁぁぁああああああああ」

その次の瞬間、私は恐怖のあまり気を失いそうになった。私の手首を掴んでいるその手には──手首の関節がなかった。

まるで──人形の手のように手首の関節がなかったのだ。

生き人形には決して関わってはならない。

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