筋が良い(東京都豊島区) | コワイハナシ47

筋が良い(東京都豊島区)

スピリチュアルアイドル・疋田紗也。雑誌「ブレイクマックス」の取材で初めてあったとき、彼女はまだ18歳の女の子であった。場所は池袋のサンシャイン60。A級戦犯が裁かれた巣鴨プリズンの跡地であり、心霊スポットとして有名であった。

昭和の頃は、火の玉が近隣の公園から伸び上がり、サンシャイン60のてっぺんに向かって飛んでいくとか。軍人の霊が出現するとか。数々の都市伝説が囁かれた場所であった。

「まるで、帝都にそびゆる戦犯の墓石だな」

私は池袋を歩くたびに、一帯に漂う歴史の哀愁を感じてしまい、何とも言えない気持ちになる。

その日、私と編集者は公園で紗也ちゃんとマネージャーの到着を待っていた。

やや遅れて2人が到着し、巣鴨プリズン跡地(某公園周辺からサンシャイン60にかけて)を散策することになった。

「じゃあ、紗也ちゃん、心霊スポットとおぼしき場所を指摘してご覧」

──この子は霊感が強いんです。

編集者からそんな情報を得ていた私は、彼女の実力を試させてもらうことにした。

(アイドルの霊感を見せてもらおうかな)

意地悪く、眺めていた私はびっくりした。なんの案内もしていないのに、紗也ちゃんは慰霊碑の方に歩いていく。

「こっちが、霊的な力を強く感じます」

「当たってるな」

私の一言に、編集者とマネージャーの顔色が変わった。A級戦犯が銃殺された場所に作られた慰霊碑、その前で紗也ちゃんが、にこにこしている。

「紗也ちゃん、この碑の前で何か感じるかね」

私の質問にやや考え込んでいた紗也ちゃんは、こんなことを言ったのだ。

「さっきね、この碑の前に鳩がいたの、鳩がこの碑の周りで戯れていたの」

私は正直驚いた。東京裁判もA級戦犯も知らない女の子が、英霊を鳩として見るなんて。いや、そもそも戦犯たちの霊が出ると言われている心霊スポットの取材だと、当日初めて聞いたはずの子に何故ここまでわかるのだろうか。

「どうやら、紗也ちゃんの霊感は本物のようだ」

「ええ!? そうなんですか?」

紗也ちゃんのマネージャー兼所属事務所の社長さんが驚いたような顔をした。

「そうですよ。間違いなく霊感がある。だから、彼女は今からスピリチュアル・アイドルになったらどうですか?」

「スピリチュアル・アイドル? それ面白いですね」

この日から、疋田紗也はスピリチュアル・アイドルとして活動を始めたのだ。

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