チックとタック(徳島県) | コワイハナシ47

チックとタック(徳島県)

私や弟をかわいがってくれた祖母も、私が大学に通っていた頃からボケが目立つようになった。食事をとったにもかかわらず、何度も要求し、やたらと泣くようになった。

「花屋の仕事を取り上げたのが、いかんかったね」

父親はそう言ったが、もはや遅かった。赤い服の女の事件で、災難に遭った祖母ではあったが、その後は順調に花屋を経営していた。だが、ふとした拍子に体調を崩した祖母は、商売から身を引き、そのことが余計に祖母を老け込ませた。

その頃、我々一家は父の転勤の関係で千葉県市川市に居を構えており、四国徳島県にはいなかった。そのため、祖母は叔母の家に住み、介護は従姉妹の和子姉ちゃんが行っていた。

ある日、和子姉ちゃんからこんな話を聞いた。

「としゆき、ばあちゃんがな、変なことを言うんよ。鳩時計が鳴ると時計から小人がいっぱい降りてくるって」

私は吹き出しそうになった。

「阿呆やな、それだとまるで童話の『チックとタック』やんか」

「いや、怖いんやけど、その小人が輪になって踊っているぞって。目の前で踊っとるのが見えんのかってばあちゃんに言われるんよ」

「……ええっ」

なんとも不気味な話であった。単なる認知症の進んだ祖母の妄想だと言ってしまえばそうだが、何か引っかかるものがあった。妙なリアル感があったのだ。

ある朝、目覚めた祖母は、更に不気味なことを和子姉ちゃんに口走ったそうだ。

「じいちゃんが夢枕に立って宝の在り処を教えてくれた」

「嘘でしょ」

「ほんまやって、ありがたいね」

そう言って祖母は歓喜の声をあげた。

「早く、宝を探すのじゃ、宝を探すのじゃ」

祖母は大興奮していたが、和子姉ちゃんがそれをどうにか抑えた。

「探したほうがいいのかいな」

和子姉ちゃんが父に相談していたのを覚えている。

念のため、父や姉ちゃんが花屋のその場所を探したのだが、なんと本当に金銭が出てきたのだ。夢の予言は事実であった。──だが、全部小銭であった。

この話を思い出す度に笑ってしまうのだが、我が家には小銭がよく似合う。

それにしても、祖母は本当にボケていたのであろうか。あれは洒落好きの祖母の悪戯ではなかったのかと思ってしまうのだ。

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