うなぎの背開き(千葉県) | コワイハナシ47

うなぎの背開き(千葉県)

これは元号が平成に変ったばかりの頃、私が千葉県某所で聞いた話である。

大学卒業後、就職した私は、千葉県にある会社の社員寮に住み、時折船橋市と市川市の境に位置する実家に帰っていた。

ある日、社員寮から実家に帰宅した私は、東京スポーツのプロレス記事を読んでいた。

「やっぱ、新日本プロレスやな」

そんな独り言を言っていると、弟がしたり顔で近づいてきた。

「兄ちゃん、うなぎ屋の話、聞いたか?」

私は弟の顔をまじまじと見直した。

「うなぎ屋の話……?」

「あぁ、そうや、あの駅前の」

実は千葉で我が家のあった町には、評判のうなぎ屋があった。香ばしい匂いが常に駅前に充満し、あまりに美味しそうなので腹の虫が鳴ることも度々であった。

「あぁ、美味そうな店やな」

実はその店の孫息子が殺人事件を起こし、町中が大騒ぎになっていたのだ。

「あの交際相手の女の子の一家を皆殺しにした事件の犯人が、あそこの孫息子や」

「ええっ!? あの一家四人皆殺し事件の犯人がうなぎ屋の孫息子とは、まじかいな」

うなぎ料理の名店に生まれた少年はわがままに育ち、近在でも悪評の立つ不良少年であった。しかも、この少年は街中で好みの女の子を見つけた後、車で轢き倒し、弱った女の子をレイプするという悪行ぶりだったのだ。

そればかりではない。ヤクザの女であったフィリピーナに手を出した少年は、示談金を得るためにレイプした女の子の家に侵入。

まず女の子の祖母を殺害し数万円強奪、その後帰宅してきた母親を殺害、再び女の子をレイプした後、夜遅く帰ってきた父親も殺害し、翌日妹も殺害している。空前の凶悪犯罪であると言っても過言ではない。

「鬼やろ、話によると、手を合わせて命乞いしながら逃げるおばあちゃんをめった刺しにしたらしいわ」

「それにレイプされた女の子の目の前で、次々と家族を刺殺したんだよな、狂っとるな」

聞くだけで、反吐の出る話だった。鬼畜の振る舞いに、近所の人々は戦慄を覚え、店に寄り付かなくなった。

「あの店にお金出したら、殺人鬼の弁護費用になってしまうから」

少年の猟奇犯罪は無責任な噂を生み出し、親の商売も窮地に追い込んでしまった。あまりにも残忍な犯行のため、裁判では未成年にもかかわらず死刑判決が下った。弟が一層声を潜めて言った。

「実はな、被害者四人全員、背中から刺されて殺されたんや」

「背中から……」

私もごくりと生唾を飲んだ。

「そうや、おばあちゃんも、お母さんも、お父さんも、妹ちゃんも全員、背中から縦にずばーっと切り裂かれたんや」

「それは酷い」

私が言葉を失うと弟は続けた。

「全員、背開きや、うなぎを料理するとき関東では背中を裂くよね。四人全員背中から背開きにされとるんや」

私は背中に鳥肌が立つのを感じた。うなぎ屋の息子が殺人事件を起こし、うなぎの背開きのように人間を切り裂いたなんて。

「うなぎの祟りじゃないかって近所では評判だよ」

弟はそう締めくくった。

その後、うなぎ屋はしばらくは営業を続けたが、ひっそりと閉店した。この殺人事件はうなぎの祟りであったのだろうか? 因みに被害者一家の父親は、ロス疑惑の三浦和義のプライベート写真をスクープしたカメラマンであった。

因果は巡る。

シェアする

フォローする