どんずるぼうの心霊写真(奈良県香芝市) | コワイハナシ47

どんずるぼうの心霊写真(奈良県香芝市)

近鉄南大阪線〝上ノ太子駅〟から徒歩二十分、そこに奇勝〝どんずるぼう〟と呼ばれる場所がある。

〝どんずるぼう〟とは山の名前である。

霊山のひとつでたまに巡礼者がやって来る。山に登る道が階段状にほぼ一直線になっており、登りきると石灰岩の景色がちょっと珍しい。また、大学からも手頃な距離であることから、よく学生たちの自主映画のロケ地として利用されていた。

さて、後輩たちがここで8ミリ映画を撮影していた時のことである。

「おい、下の車から電池取って来てくれや」

そう頼まれたO君は、「よっしゃ」とばかり、長い階段状の道を勢いよく走り降りた。

ざざざざざっ。

なにものかが階段の横を走り降りて行く。

道の両端は雑木林になっていて、なにが走っているのかよくわからない。

最初は犬かなにかだと思ったそうだ。

立ち止まると、そのなにかもしんと静まる。

走りだすとまた、雑木林の中を同じように、ざざざざざっと走る。

上にはたくさんの仲間がいる。ははぁ、これは誰かいたずらも兼ねて俺と競争するつもりやな。よしっ!とばかり彼は全速力で下まで走り降りた。

わずかの差で彼が下に到着するほうが早かった。

「勝ったぞぅ!」

思わずガッツポーズをして、はたと気がついた。

この雑木林は人間どころか、犬でさえ通り抜けるのは難しい。ましてや姿も見せずに走るなど不可能である。

もちろん、競争した仲間などいなかった。

ただ、ガッツポーズをした瞬間、雑木林の雑草はあたかも誰かが通り抜けたようにゆさゆさ揺れていたという。

〝どんずるぼう〟ではなにか不思議なことが起きる。これは、我々の中でも以前からささやかれていたことであった。

ここに来れば絶対に幽霊を見ることができる、そう言い切る者までいた。

実際、ここで着物姿の女性の幽霊をカメラに収めたという学生もいると聞く。また別の学生は真夜中に何千何百という人魂が大渦を巻きながら、上空を飛ぶのを見たそうだ。

そうなると、その幽霊だか人魂だかを写真に撮ってやろうではないか、というやつが必ず出てくるものだ。

写真を専攻しているN君は、いやがる後輩を無理やり車に乗せ、真夜中に〝どんずるぼう〟にやって来た。

「先輩、やばいですよ。帰りましょう」

尻しりごみする後輩を怒鳴りつけ、車を降りる。

バチーン!

その瞬間、なんと彼が肩からかけていた、カメラの入ったジュラルミンケースの頑丈なベルトが切れて足元に落ちた。

あわててふたりは車に乗り、そそくさと帰ったのであった。

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