甲山の祠(兵庫県西宮市) | コワイハナシ47

甲山の祠(兵庫県西宮市)

昔、甲山付近に「祠」があったそうである。

戦争中、神戸が大空襲にあい、あたりが火の海となってなにもかも燃えてしまった時、その甲山の「祠」も焼けてしまったのだという。あるいは戦前からすでになかったともいうが、その「祠」には言い伝えがあった。それは昔誰かが妖怪退治をして妖怪を封じ込めたというもので、その妖怪の姿は半身が人で半身が獣であったという。その言い伝えと関連があるのかどうかわからないが、「祠」のあったあたりが燃えて間もない頃、焼き出された人々がたむろしていると、夕暮れのその場所に変なものが立っていたというのだ。

何人かの人がそれに気づいて、よく見てみると、夕焼けのシルエットの中に立っているその変なものは、頭が肩幅より異様に大きい。しかも二本足で立っているというので、いったいあれはなにものだろうと近づいて見ると、それが牛の顔をした、着物姿の半身獣、半身人間の化け物であったのだ。しかも、その「牛女」は焼き出されたと見える犬か何かの死体を片手に持ち、股から真っ二つに引き裂いて口のまわりを血だらけにして食はんでいたのである。

あまりの恐怖に声も出ず、人々はただ茫然とその光景を眺めていたが、いつのまにかその〝牛女〟は、どこかにかき消えてしまった。

初老の男性は、わしが見たわけではないが、聞いたことがあると私に話してくれたのである。

甲山、頭が牛、体は着物を着た女、そして血の臭いがする。さらに、戦時中という要素がここに入ってきた。

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