千日前大火災後のタクシー(大阪市中央区) | コワイハナシ47

千日前大火災後のタクシー(大阪市中央区)

大阪の千日前でたくさんの犠牲者を出した大火災があったことを覚えていらっしゃる方もあるだろう。

この大火災のあといろいろな噂があった。死んだはずのお得意さんが店に訪ねてくるとか、真夜中の事故現場に買い物かごを持ち子供の手をひいた主婦がいたとか、お辞儀する店員がいたとか、そんな幽霊の目撃談が大阪ミナミのあちこちでささやかれた。どれもこれも噂であったが、ひとつだけ興味のある話を見つけた。

この話はFさんというタクシー運転手の実体験である。

当時、千日前の百貨店跡は新しいショッピングセンターの建設工事中で、今まで正面にあったタクシー乗り場が裏側に移転した。

その日もたくさんのタクシーが並んでお客をさばいていたのであるが、Fさんの前に停車していたタクシーは会社の同僚の車であった。そのドアがパタンと開くと、人を乗せないままパタンと閉じる。Fさんは最初はドアの開閉のテストをしているのかと思ったらしい。ところが、この運転手はメーターを倒すとそのまま車を発車させたのである。「お客も乗せんとおかしなやっちゃな」と思ったが、Fさんもそのすぐあとお客を乗せて町中に出ていった。

仕事が終わって会社に戻ると社内中が大騒ぎになっている。

見ると、ソファで頭をかかえて真っ青になっている運転手がいる。千日前でお客を乗せずに賃走した運転手である。

「Fさん、この人な、千日前でお化けを乗せたんやと」

まわりでワイワイ騒いでいる仲間が言う。

なんでも彼は千日前で若い母親と幼稚園児ぐらいの男の子のふたり連れを乗せて走ったが、途中で消えていなくなったというのである。

「千日前で?……ははぁ」

Fさんが千日前のタクシー乗り場で見たことを話すと、それまで騒いでいた会社の同僚たちは水を打ったようにシーンと静まり返ったという。

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