まっちゃあ 死体が走ってくる(青森県平川市) | コワイハナシ47

まっちゃあ 死体が走ってくる(青森県平川市)

ミヤマさん夫婦。

青森県平川市の山の中。

知る人ぞ知る山菜採りの名スポットと知人から教えられた場所だった。

だが、いざ探してみるとキノコも山菜も、ただの一つも見つからないうえに、そこかしこに山菜目当てと思わしき人々の姿がある。

期待していた展開と真逆だ。

面白くない。

車に戻り、道の駅で買い物でもして帰ろうと二人は相談した。

そして、下山の途中のこと。

「すみませーん。ちょっとこっちさ、来てもらえねがぁ」

呼び声に足を止めると、横の林から誰にともなく大声を出す、上下スウェット姿の若い男がいた。

何だか怪しい。

が、怪しいなりにもこれだけたくさんの人がいれば、誰か相手をするだろう。

「ちょっとこっちさ。ちょっとこっちさぁ」

夫婦は聞こえないふりをして、帰りを急いだ。

「誰が頼むじゃあ。わぁ俺、そこで死んじゅうんだねぇ死んでいるんだよ。死んでまっちゅうのさぁ死んでしまっているんだよお」

こうなると怪しさは消える。

〈怪しい〉とは方向性がまるで違う。

この若者は完璧に頭がおかしい。

「待ってって。待ってさぁ」

あろうことか、男はこちらに駆け寄ってきた。

幾ら年の功があるとは言え、会話もままならなそうな相手は御免だ。

年金暮らしの夫婦は、山道を狂人から走って逃げるほどの健脚を持ち合わせていない。

男は夫婦の目の前に立ち塞がり、

「ほらぁ。死んでまっちゅうって死んでしまっているだろ」

と言いながら、自分の顎に両手を添え、持ち上げた。

男の首がぐぐぐと倍近く伸びる。

「げぇ」

とげっぷのような音が男の口から漏れると、異常に長い舌がだらりと垂れた。

飛び出そうなほど目を剥くと、なるほどそれは死に顔そのものだ。

前言撤回する。

夫婦には山道を走って車まで戻るほどの健脚が、まだあった。

家に帰ってから電話を掛けまくり、家族と親戚中に山であったことを話したが、誰にも信じてもらえなかったそうだ。

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