山で蠢くなにか(青森県) | コワイハナシ47

山で蠢くなにか(青森県)

見せたいものがある、と言われて、塚本は学生時代からの友人、川辺のアパートに招かれた。

「どした?」

「まあまあ、時が来れば見せらぁね」

川辺のアパートは旧碇ケ関村から隣県に通じる旧国道の途中にあった。

低賃金の工場で働く川辺が言うには、「家賃が安ければどこでも」と決めた住まいなのだそうだ。アパート用駐車場と銘打たれた敷地は未舗装の野原だった。土地柄を考えれば山沿いの空き地のどこもかしこも駐車可能であろう。

一言で表現するなら、そこはド田舎と言えた。

夕方訪れ、世間話を続けているうちに、すっかり外は暗くなった。

なかなかアルコールの類が振る舞われないため、今の所もう一つ盛り上がりに欠ける友人宅来訪だ。

「おお、始まった。見へ見ろ。見へ見ろ。そど外だ。そど」

川辺が待ってましたと立ち上がり、ベランダに通じる窓を開けた。

外は殆ど真っ暗闇で、いかにも山間の景色。木々のシルエットだけが月明かりに照らされてぼんやりと見えていた。

塚本は川辺と一緒にベランダに出て、何が起きるのか、又は既に何かが始まっているのかを確認すべく、友人と目線を合わせて間近にある山肌をじっと見つめた。

「ん?何なんが動いだが?」

山の陰影が乱れた。

木の間を縫うように、山の中を何かが動いている。

そして、一つその乱れに気が付くと、次々と動くものがいることが分かった。

「猪が?猿が?」

目を凝らすうちに暗がりに慣れる

動いているものは人間ほどの大きさだ。

だが、依然としてはっきりは見えない。

「猟師、こったらこんな夜にでも山さいるもんだが?」

「おめ、何言っちゃあんずよ何を言ってるんだよ……」

「いや、でも人っぽいけんどさ」

「あったに光っちゅうんだはんであんなに光っているんだから、あれっきゃ山の神様だべや」

あんなに光ってる。

と言われても、どこで何が光っているのか。

もしかして空を見ているのか。いや、川辺の目線は下界を向いている。

塚本は広範囲を見渡して光る何かを見つけようと躍起になった。

もぞもぞと山肌を蠢く何かは、風とともに木々を揺らし、きっかけも分からないまま、また風とともに一斉に動きを止めた。

「神様だぃ。すげえべや」

と川辺は満足そうに言った。

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