川から突き出る腕(青森県弘前市寺沢川) | コワイハナシ47

川から突き出る腕(青森県弘前市寺沢川)

保育園からの帰り道、橋の上で親子は立ち止まった。

川面に水鳥が浮かんでいるのが見える。

「鴨だな。可愛いべ」

「うん。鴨の親子だね。大きいのがパパで、小さいのがあたし」

魚はいるかな、と娘が柵さくに手を掛けて川を凝視する。

「いるかもね」

と、父も同じく橋の下を見つめる。

ざぶん、と音がして手を開いた二本の腕が川面から飛び出た。

「パパっ!」

「誰が潜っちゃあのが誰か潜っていたのか。うわあ、あったあんなに汚い水さ、よぐもまあ」

とまで言ってみたが、よくよく考えるとこの川は大雨でも降らない限り、足を入れたところで脹ら脛にすら至らないほど浅い。

また、ざぶんと音を立て、腕は沈んだ。

思った通り沈んだ場所は川底の砂利がくっきりと見えるほど、浅かった。

その昔、大洪水で多くのホームレスが亡くなったと伝えられる、弘前市寺沢川でのことだ。

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