白っぽいあの人(青森県) | コワイハナシ47

白っぽいあの人(青森県)

著しく酔っている状態のとき、人は何を見てもおかしくはない。そもそも現実を捉える能力を損ねた状態だからだ。

風邪を引いた人が高熱に魘されているときも、やはり同様の理由で妙なものを見やすくなる。

このため、こういう状態のときに見た物事を語られても、実話怪談として書くのは憚られる。

では、こんな話はどうだろうか。

美咲さんには六歳の娘、葵ちゃんがいる。

「基本的に身体が丈夫な子で、手が掛からないんですけど」

年に一度、一日だけ大風邪を引くのだそうだ。

「前触れもなく朝から四十度くらい熱が上がるんで、すぐ病院に連れていきます」

荒い息で意識こそあるものの、ぐったりしたまま。

全身にぐっしょりと汗を掻いている。

焼けるように熱い身体に苛まれる愛娘の姿は痛ましい。

病院に連れていくと、毎度、即入院となる。

注射を打ち、点滴。

そうすると決まって翌日には熱が冷め、嘘のように元気になっている。

「ママ。またあの人来た」

元気になった葵ちゃんは〈あの人〉のことを報告する。

夜、〈あの人〉は気が付くと、病室にいる。

そして、知らぬ間にいなくなる。

男なのか女なのかは分からない。

顔も見ているのだが、何故か男女の区別を付けることができない。背格好も衣服も、白っぽいことは覚えているが記憶は曖昧だ。

両手を横たわる葵の顔の前にかざす。

どれくらいの時間、そうしているのかも分からない。

とにかく、終わると〈あの人〉は消える。

まるで夢の中にいるような話だが、美咲さんが寝ている間に現れている訳ではない。

「ママも見た。助けてくれたね」

「うん」

〈あの人〉が誰なのか、美咲さんに心当たりはないそうだ。

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