青森乃小怪 六編(青森県) | コワイハナシ47

青森乃小怪 六編(青森県)

一、

夫婦で知人の火葬を見届けた後のことだ。

セレモニーホールの駐車場に駐めた車に乗り込もうとすると、

「ちょっとおらもいいべが……」

と声がして、まだ二人が乗る前にも拘わらず、軽自動車がぐぐっと沈んだ。

亡くなった知人の声には似ても似つかない、老女の声だった。

二、

弘前駅の近くにある二十四時間営業のファストフード店でバイトをしていた頃のこと。

帰宅途中、道すがらの電柱の傍に佇む老婆を何度も見かけた。

老婆は背格好こそ同じだが、見るたびに顔が違っていた。

複数の老婆がいるのだろう、で話が済めばいいのだが、電柱の横を通り過ぎてから振り返ると、どの顔にせよ老婆の姿がないというのだからややこしい。

三、

学生の頃、ビリヤードにハマっていた。

その晩は、友人と青森県内の某ビリヤード場でプレイしていた。

小さなビリヤード場の平日深夜ということもあり、二人の他は店内を出たり入ったりするバイトの店員が一人いるだけだった。

友人がトイレに消えると、

カーン。

ゴロゴロ。

とビリヤードお決まりの音が響いた。

が、ボールは動いていない。

気のせいだろうと思っていたら、友人もトイレでその音を聞いていた。

四、

深夜、家が揺れた。

ゆっくりと一定の間隔で、どしーん、どしーんと音が鳴り、壁やガラスが軋きしんだ。

揺れはすぐ収まったのだが、家族四人は今にも家が倒れるのではないかと恐れ、着の身着のまま外に飛び出した。不思議なことに、あれだけ揺れたというのに、近隣の住居の明かりはどれも消えたままだった。

首を傾げつつ一家は再び床へ就いた。

翌日の朝、庭の杉の木が一メートルほど移動していることが分かった。

五、

子供部屋から、

「おいなりさーん」

と、我が子の声が響いた。

保育園に子供を送ったばかりのことだったので、これはおかしいと確認したところ、確かに子供は部屋におり、ブロックで遊んでいた。

保育園に電話すると、

「いえ。タケシ君ならこちらにちゃんといますよ……。あ、すみません。いません。あれ?いたのに?さっきまでいたんですよ。あれ?いるんですか?そちらにいるんですか?」

と埒が明かない対応をされた。

保育園までは車で十分ちょっと掛かる距離で、その頃タケシ君は二歳だったそうだ。

六、

大座敷で行われた会社の忘年会の最中、

「お待たせぇ。遅れでまったじゃあ」

と障子の戸を開けて顔を覗かせたのは、その年の初め頃に、脳溢血で亡くなった重役だった。

その場にいた社員全員がこの珍事に固まっていると、

「ああ。そうか……」

と重役は寂しそうに言い残し、顔を引っ込め戸を閉めた。

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