までまで(青森県藤﨑町) | コワイハナシ47

までまで(青森県藤﨑町)

竜司さんの小さい頃の記憶。

青森県藤崎町の集落の外れにある小さな商店へ向かう途中にその神社はあった。

神社は田んぼの中にポツンと建っていて、道路沿いの神社がある一方には小川が流れていた。

神社の鳥居を潜るためには小さな板ばりの橋を渡らなければならない。

「までまで待て待て。おめ。そっちゃ行げばまいねそっちに行ったらダメだ」

まだ小さい竜司さんが橋を渡ろうとすると、両親がそう言って止める。

結局、あの神社には参らず仕舞いだったな。

と、不意に思い出したのはつい最近のことだ。

しかし、回想にはどこかチグハグな部分がある。

年端もいかない頃の朧気な記憶とはいえ、確かに神社があったことは覚えている。

だが、少年から青年、その後、進学のために集落を出るまでに至る記憶の中には、神社がなく、ただあの道には小川と田んぼだけがある。

かつて何度も帰省しているが、そこに神社はない。

あの神社は自分が小さい頃に潰れたのだろうか。

今となってはどうでもいいことなのだが、何故か妙に記憶の齟そ齬ごが気になった竜司さんは、実家に電話を掛けた。

「なもや違う。最初っから、あの道には神社も橋っこもねぇねないよ」

父はそう言った。

「あ?んだ?覚えでねえのが?」

「なもやなもや違う違う。おめだっきゃお前は、むったど何回も死んだわらし子供さ呼ばれでだんだね。おらんど俺達、おめとばお前を止めるの大変だったんだど」

聞くと、当時ちょうど竜司さんと同じくらいの年頃の女の子が、小川に落ちて亡くなる事故があったのだそうだ。

事故現場の横を通るたびに、何度静止しても竜司さんがふらふらと小川に歩いていくので、両親はその都度食い止めたものだが、数カ月もしたら何ということもなく手を引かれるままに素通りするようになったとのことだ。

父は続けて〈その頃、神隠しにあっていなくなった男の子がいて、その子が竜司さんの身代わりになってくれた云々〉を話し出したが信憑性が薄く、あまりにもくどい語り口だったため、何を話していたかはよく覚えていないそうだ。

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