バスの中の女(大阪府) | コワイハナシ47

バスの中の女(大阪府)

これはふたりの大学生が、アルバイトに向かう車から見たものの話だ。

その車は夜十時頃、淀川の堤防沿いの道を大阪市内へ向けて走っていった。

ヘッドライトの明かりが妙なものを照らした。いや、これが昼間だったら別段なんの不思議もなかっただろう。

それは、道の両端にずらりと並んで草むしりをしている子供たちの姿であった。

子供たちは、全員幼稚園児のかぶる黄色い帽子に青い制服姿で、うつむいて、黙々と草をむしっているのだ。こんな時間になぜ園児たちが……。

「おい、なんでこんな時間に草むしりなんかしてんのやろ?」

運転をしていたS君は、後部座席にいる友人にたずねる。

「えっ、なに?」

その時、園児たちの列が途切れた。

「さっき、幼稚園くらいの子供が列をつくって、草むしりしてたんや」

「ふーん」

「お前見んかったんか」

「気づかんかったけど」

その友人は見なかったのか、見てもなにも思わずにいたのかもしれない。それどころか、「カップラーメン買うからコンビニがあったら停めてくれ」などと吞のん気きなことを言っている。

しばらくして、コンビニエンス・ストアがあったので、友人はバイト先で食べるつもりのカップラーメンを両手に持って車に帰ってきた。

友人はそのまま後部座席に乗り、S君は車を発進させた。

やがて、廃車置き場が見えてきた。

そこに車輪のない大型のバスが捨ててある。真っ暗なバスの窓に、真っ白の人影がある。

「あれ?」

S君は不思議に思ってよくみると、その白い人影と目が合ってしまった。

はっと驚いて、金縛りにあったように硬直したまま人影から視線をそらすことができない。

人影は女であった。

白い着物を着た瘦せた女がニコリと笑うと、右手を上げ、S君に向かって〝おいで、おいで〟の合図をしている。

廃車置き場を通り過ごして、やっとS君は我に返った。

「おい、今のは見てたやろ!」

振り返ってうしろの友人を見た。

「見た、見た、見た……」

両手のカップラーメンをグチャッと握りつぶしたままのポーズで、青ざめている友人の姿があった。

車内は砕け散ったラーメンでいっぱいだった。

シェアする

フォローする