お寺の大天狗(京都府) | コワイハナシ47

お寺の大天狗(京都府)

京都のあるお寺が親戚というFさんは、幼い頃から夏休みになると家族でよくそのお寺に遊びに行ったという。

そのお寺の住職というのが、なかなか有名な高僧なのだそうだ。

社会人になってからしばらくはそのお寺に行かずにいたのだが、四、五年ほど前に久しぶりにFさんはその住職と語らった。

話が急に、狐狸妖怪に関する興味深い話になった。

「いったい、そんなものがいるのですかねぇ」

「それじゃったら、ちょうど今晩、天狗がうちに訪ねて来るから、泊まっていくとよかろう」

半信半疑ながらその晩お寺に泊まっていると、夜の十時を過ぎた頃、突然地面が揺れ、ドーン!と大きな地響きがした。

地震にしてはたった一度の振動とはおかしいなと思っていると、例の住職がやって来ていう。

「天狗が来ましたぞ」

住職が話すには、どんな山でもひとまたぎするとてつもなく大きな天狗がいる。それが日本各地のお寺を巡業していて、今晩がこのお寺の番なのだ。

先の音は、天狗がお寺の山門に腰かけて休息をした音なのだという。

Fさんは表に出てその山門の上を見ようとしたが、「そう誰にでも見えるものでもない」と言われて、ああそれもそうだとその時は納得したのだという。

翌日、そのFさんが、お寺の小坊主さんをつかまえて、聞いた。

「君は天狗を見たことがあるのか?」

「あれは誰にも見えません。けれども、うちの住職には天狗が見えて、また呼ぶこともできるのですよ」

こんなことがあったらしい。

ある日の夕方、ひとりのお婆さんが住職を訪ねてきてお経をあげてくれと頼むので、本堂に通した。すると、そのお婆さんは、「実は心残りがひとつだけあって、それは念願だったお伊勢参りができなかったことなのです。なにとぞこの願いをかなえていただきたい」と、悲しそうに訴える。

「それさえかなえればええのじゃな、それなら天狗に連れていってもらいなされ」

住職が言うと、ドーン!と寺の庭に地響きが起き、その瞬間そのお婆さんの姿が消えたのである。と、思うと次の瞬間には、そのお婆さんが現れて住職に、しきりに頭を下げてお礼を言っている。手には、お伊勢名物のお菓子の箱を持って。……そして、ふっと消えたのである。

「そのお婆さまは、やっと成仏したのですよ」

その小坊主は言った。

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