むじなを見た人その二(東京都) | コワイハナシ47

むじなを見た人その二(東京都)

役者のSさんという人も〝むじな〟に会った。

場所は東京都内、これも騒々しく人や車の行き交う黄昏たそがれ時どきである。

彼も、電柱のそばに着物を着てうずくまっている女の人に声をかけたのである。

その時に見た顔は、どう表現していいのか説明に苦しむ複雑な顔であったという。

影があって、目はあるのだが眼球がなかったような、しかし、口と鼻はなかったような印象もある。あやふやな記憶だがその時は、のっぺらぼうだ!と直感したという。

ふと気がつくと、公園のベンチに座っていた。

「……あれ、俺どうして、公園のベンチなんかに座ってるんだ?」

とにかく、狐に化かされたような心持ちである。

この公園は?ああ、いつも通う道の脇にある公園か、そうか俺は今仕事の帰りで、そこの道を歩いていて……で、なんで公園なんかに入ったのかな?

まるでうたた寝していて、はっと気づいたような感じだ。どう考えても帰り道を急いでいてこの公園の前を通りかかったところで、記憶が途切れてしまっている。

しかし、あの顔のない変なものの記憶はなんだろう?

「まあいいか、帰ろう」

立ち上がって、公園を出る。すると、電柱のそばに着物を着た女の人が、うずくまっている。「もし……」と声をかけようと思った瞬間、全身にまさしく電流がビリッと走ったのである。

この人には顔がない。これはこの世のものではない。そして、誰かが声をかけるのを待っている。

着物を着た女の人の顔を見ないように、そのまま家路についたという。

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