遠刈田こけし (宮城県仙台市) | コワイハナシ47

遠刈田こけし (宮城県仙台市)

仙台市で一人暮らしをしている真子さんは、派遣社員として働いている。だが真子さんは現状には満足しておらず、資格を取って正社員になりたいという目標を持っている。そのため、平日の昼間は仕事、夜と休日は試験に向けて勉強に励んでいた。

真子さんのお母さんはこけしが好きで、実家にはこけしが数多くあったそうだ。そのうちの大半が遠刈田こけし、鳴子こけし、弥治郎こけし、作並こけし、肘折こけしという宮城県五系統のこけしだった。これらの中からお母さんの出身地で誕生した遠刈田こけしを、真子さんは譲り受けたのだという。

遠刈田のこけしは、真っすぐな胴体に大きな頭が乗るスッキリとした姿をしている。そして、顔には額から鬢(耳ぎわの髪の毛)までを縁取るような、赤い放射状の柄が描かれている。

真子さんの部屋のチェストの上に置かれたこけしも、細い切れ長の目をした美しい顔で、いつも微笑んでいた。

真子さんはこの遠刈田こけしをとても気に入っていた。表情がどこかお母さんに似ていて、勉強に疲れた時などに慰められるからだ。

だが、たまに驚かされることもあった。チェストの上のこけしが、少しだけ向きを変えたり、横へずれていたりすることがあるのだ。それは、真子さんが勉強で無理をしている時などに限って起こる。しかし、真子さんは疲れているからだと思うようにしていたらしい。

ある雪の日の夜のことだった。勉強が捗ず真子さんは、夜食にインスタントラーメンを作って一息入れることにした。

真子さんは小鍋に水を入れて火にかけ、机に戻った。沸騰したら、すぐに立つつもりでいたのに、疲れていたためか、いつの間にか机に突っ伏して眠ってしまった。

すると突然「ドンッ」という音がして、真子さんは目が覚めた。すぐに火をつけていたことを思い出して、慌ててガス台へ行くと、小鍋の水はすっかり蒸発していた。真子さんは、もう少し眠っていたら火事になっていたかもしれないと、ヒヤリとした。

ふとチェストの上を見ると、こけしが倒れている。真子さんはこけしが倒れた音で目が覚めたことに気が付いた。地震でもないのに、なぜこけしが倒れたのか真子さんは不思議に思った。まるでこけしが、鍋の空炊きを注意してくれたように思えたそうだ。

それから数ヵ月後の深夜のこと。資格の試験日が近づいた真子さんは勉強に夢中になっていた。するとまた、チェストの上のこけしが音を立てて倒れたのだ。突然のことで、真子さんは声を上げるほど驚いた。

咄嗟にまたガスの火を点けたままにしたのかと考えたが、そんなことはない。真子さんは不思議に思って、こけしを立て直そうと手に取った。そして、こけしの顔を見た。すると、こけしは、眉間を寄せ目尻を下げた。それはまるで泣いているかのような顔だった。真子さんはこけしを投げ出してしまった。

するとその時、お母さんが真子さんを呼ぶ声が聞こえた気がした。その途端、真子さんは胸騒ぎを覚えた。もしやお母さんに何かあったのではないかと心配になったのだ。

真子さんは恐る恐るこけしを手に取って、再びその顔を見た。すると、いつもの笑顔に戻っていた。あれは私の見間違いだったかもしれない。そう思ったが、やはり気になって、深夜にもかかわらず、実家に電話を掛けた。しかし、誰も出ない。真子さんは軽自動車で実家へ向かうことにした。

真子さんが運転していると、車内にスマホの着信音が響いた。ドキリとした真子さんは、自動車を停めてスマホの通話ボタンにタッチした。

こけしがもたらした予感は的中した。電話の主は弟で、お母さんが突然激しい頭痛に襲われて、緊急搬送されたとの知らせだったのだ。

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