鳴子こけし(宮城県大崎市) | コワイハナシ47

鳴子こけし(宮城県大崎市)

ある日、千葉県出身の忍さんは彼氏を誘って、宮城の大崎市、松島市、仙台市をドライブ旅行した。

一番の目的は、こけしの最も古い生産地と言われる鳴子温泉で、伝統品である「鳴子こけし」を手に入れることだった。

実は最近、一部の女性達の間でこけしがブームになっている。彼女達は「こけ女」と呼ばれている。忍さんもその一人だったのだ。

鳴子温泉に近づくと、こけしの絵が描かれた道路案内表示が現れた。巨大なこけしが出迎えてくれたり、顔を出して記念撮影ができるこけしのパネルがあったり……。至るところでこけしと出会えて、「こけ女」の忍さんは大喜びだった。

忍さんは彼氏と鳴子温泉に一泊した後、こけし製造の実演を見られる施設を見学。そして鳴子こけしを手に入れた。

帰りは、行きの道とは違う道路を通ることにした。ナビが案内する国道から離れて、細い道を選んだ。秋も深まり、紅葉が間近に見られるだろうと思ったからだ。

車中、忍さんは観光施設でもらったパンフレットを熱心に読んでいた。そのせいか、気分が悪くなってしまい、途中、休憩を取ることにした。

外で新鮮な空気を吸って元気になった忍さんは自動車のボンネットにもたれて、バッグから鳴子こけしを取り出した。愛らしいこけしの表情に気分が和む。こけしの頭と胴体を持ってひねってみる。鳴子こけし独特の「キュッ、キュッ」という音がする。

運転席でガイドブックを広げて、この先の道を調べていた彼氏と目が合った。こけしのお陰で和んだ表情になった忍さんを見て、彼氏も優しい笑顔を浮かべていた。自動車にもたれる忍さんと運転席の彼氏の目が合った。

しばらくして、彼氏は「コーヒーを買ってくる」と言って、自動販売機の方へ歩いていった。忍さんは一人こけしを見つめ、音を聞いていた。

すると、いつの間にか忍さんの隣にお婆さんが立っていた。お婆さんも音が気に入ったのか、こけしを見つめている。お婆さんは浴衣姿だったので、温泉へ来た観光客だろうと忍さんは思ったそうだ。

忍さんは、お婆さんに「良い音がしますよね」と声を掛けた。するとお婆さんが「孫娘に買ってあげたかった……」とつぶやいた。

忍さんが「お土産にしたらきっと喜ばれますよ」と言った時だった。

忍さんは手の中のこけしを見て悲鳴を上げると、思わず放してしまった。美しかったこけしが半分焼けただれたように変わっていたのだ。

忍さんは一緒にこけしを見ていたお婆さんに、助けを求めるように顔を向けた。

だが、忍さんはまたもや悲鳴を上げてしまった。お婆さんの顔もこけしと同じように、半分焼けただれていたのだ。

忍さんの悲鳴を聞きつけた彼氏が飛んできた。忍さんは彼氏にしがみつくと「顔が……お婆さんもこけしも……」と支離滅裂な様子で訴えた。

だが、彼氏は落ちたこけしを拾い上げると「可愛い顔しているよ。お婆さんって?」という。見ると、元の可愛いこけしに戻っていた。そして、いつの間にかお婆さんの姿も消えていた。

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