供養 弥彦神社(新潟県西蒲原郡弥彦村) | コワイハナシ47

供養 弥彦神社(新潟県西蒲原郡弥彦村)

数年前のお正月の出来事だった。

新潟市在住の恵さんは婚約者と二人、弥彦神社へ初詣に出かけることにした。

弥彦神社は県内一初詣客の多い神社で、この由緒ある神社はパワースポットとしても有名だ。

ところが、婚約者がインフルエンザに罹かかってしまい、初詣には恵さん一人で行くことになった。

元旦の午前零時を回った頃、恵さんは本殿前で参拝の順番を待っていた。その時、目の前に、髪の長い和服姿の若い女性がいることに気が付いた。

列は少しずつ前に進むが、その女性は立ち止まったまま動かない。恵さんは「進んでください」と女性に声を掛けた。しかし、女性は知らん顔。一向に前に進もうとしない。

恵さんは聞こえていないのかと思い、女性の肩を叩き、再び「進んでください」と頼んだ。

すると、女性は驚愕の表情で振り返った。女性のあまりの驚きように恵さん自身が戸惑ってしまう程だった。

その時、後ろにいた誰かが恵さんを押した。恵さんは前のめりに倒れそうになり、両手で女性の背中を押してしまった。恵さんは慌てて女性に詫びた。

しかし、女性はいなかった。恵さんの両手は、ダウンジャケットを着た中年男性の背中に触れていた。

それからというもの、自宅マンションでは不思議なことが次々と起こり始めた。恵さんはショートカットなのに排水溝に長い髪が落ちていたり、夜中に突然足音がしたり……。

ある日の夜、恵さんが寝ていると胸に重みを感じた。恵さんが目を覚ますと、胸の上に女性が正座していた。

弥彦神社で出会った女性だった。恵さんは悲鳴を上げた。

その声に驚いた婚約者が起き出した。と同時に、女性の姿も忽然こつぜんと消えてしまった。

恵さんは婚約者を怖がらせてしまうかもしれないとも考えたが、自分の胸の中だけにしまっておくことができず、一連の出来事を打ち明けた。

婚約者は「女性は霊で、もしかしたら、昔あった事故が関係しているのかもしれない」と言い出した。

一九五六年一月一日、弥彦神社では初詣の人々が将棋倒しとなり、死者百二十四人、重軽傷者九十四人を出す大事故が発生したことがあるのだ。

女性は事故で亡くなった犠牲者の一人なのだろうか。もしそうだとしたら、女性は見えないはずの自分に声を掛けてきた恵さんを頼りにしたのだろうか。あるいは生前、女性も結婚間近で、境遇が似ている恵さんと波長が合ったのだろうか。事情は分からない。

恵さんは若くして命を落としたのかもしれぬ女性に我が身を重ね、涙を流した。女性も生きていれば結婚して、家庭を築いていたかもしれない。そして、今頃は子どもや孫に囲まれた幸せなお祖母ちゃんになっていたかもしれない。

その時、二人がいた部屋の灯りが二回点滅した。互いに顔を見合わせた。なぜか二人の気持ちが女性に届いた気がした。

亡くなった人たちのことを忘れずに話題にするのは、供養に通じると聞く。そのためか、それ以降、異変は起こっていない。

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