もう三十年も前の話。
Oさんは子供の頃、神奈川県の藤沢市に住んでいたが、小学生の頃から放浪癖があって、学校をさぼってはバスに乗って、見知らぬ街中をさまよい歩いたという。
その日も当てもなく、ふらふらっとバスに乗った。そして途中、鎌倉のどこかへ降りたのである。そして街中をうろうろ歩いているうちに住宅街で道に迷ってしまった。だが歩いているうちに、またバス停を見つけ、やって来た鎌倉駅行きのバスに乗ったのである。
この時、歩き疲れなのか、体調が悪かったのか、バスのステップで、ふうっと立ちくらみがした。
(ああ、気分が悪い)と思いながら座席に座って、Oさんはずっと車窓から外の景色を見ていたという。
鎌倉市の周辺は野原や田んぼだらけだった。そんな野原に次のバス停が見えてきた。そこには誰もいなかったので、バスはそこを通り過ぎようとする。ここでOさんは、変なものを見たのだ。
バス停の標識の下に、なにかがうずくまっている。どうやら三人の子供のようなもの。
しかし、子供ではない。そのうずくまっているものは、なにやら懸命にカリカリ、カリカリと土を掘っているが、丸裸で、ガリガリに瘦やせた汚れた身体。二本の腕がやけに細い。
(なにがいるんだ?)と、見ていると、ふっとその妙なものが顔をあげて、こちらを見たのだ。その瞬間、
(あっ、気持ち悪い……いやだ!)Oさんは、そう思って気を失ったという。
だがOさんは、その三人の子供のようなものが、こちらを見た時の顔は、今も鮮烈に覚えているという。
細い身体のわりに、頭が異様に大きい。その頭のてっぺんがトンガっている。口があったという印象はないが、横向きのアーモンド型の巨大な目。その目の中に目の玉はなく、目全体が金色に光っている。
それらと目が合ったのだ!
その後のことは覚えていないが、霊能者にそのことを尋ねると、
〝餓鬼〟だといわれた。