白い手その二(大阪府富田林市) | コワイハナシ47

白い手その二(大阪府富田林市)

白い手を見たE君たちが、大学の学生食堂でそのことを友人たちに話していると、たまたまそれを聞いていた見知らぬひとりの女学生が青ざめて、

「あそこは、やっぱりそんなものが出るんですね……」

と聞いてきた。

「私たちもあそこで、それを見たんです」

と、その体験談をEさんたちに話しだした。

一週間ほど前のこと。友人のひとりが買ったばかりのバイクの試乗をするというので、彼女を含む数人の友だちがそれに付き合って、ドライブに行こうということになった。

深夜になって、ちょうどその笹藪のある砂利道にさしかかった。

新品のバイクに乗っている彼はずっと先を走っていたが、途中からスピードが落ち、彼女たちの乗る車がたちまち追いついてしまった。

「おーい、なにしとんのや、はよ、行かんかい!」

と皆が呼ぶ。彼はブワーッと吹かしてはいるが、たちまち減速する。

「どうしたの、故障?」

と彼女も声をかけるが、彼のバイクは、一向にスピードが出なくなった。

「あんまり遅かったら先行くよ」

と車から言うと、

「待ってくれよ!」

とバイクの彼は、懸命にエンジンを吹かす。

ブォオオーンという音は聞こえる。だが、やはりスピードは出ない。

仕方ないので、そのバイクを追い抜こうとして、彼女たちの車がバイクの横に並んだ時だ。

彼女たちは見たのである。

バイクのテイルの部分をしっかりと握る、真っ白な肘ひじから先の二本の手。今までそんなものはなかったのに、今はそれが暗闇の中に浮かびあがって見える。

最初、彼女はそれは飾り物かとも思ったそうである。人間の手にしては不気味なほど白かったからだ。肘から先はあるが、それ以外は漆黒の闇の中に溶け込んだかのように存在していない。よく観察してみると、彼がエンジンを吹かし、スピードを上げかけると、その白い手の筋肉にぐーっと力が入る。するとその手の力で、バイクが減速していく。そう、その白い手は、バイクを引き戻そうとしているのだ。

「わっー!!」

それを見て、車の中は大さわぎになった!

それが、バイクの彼にもわかったらしく、彼もうしろを振り向いた。

「あわっー、手やぁー!」

と彼の叫び声が上がった。彼は必死にエンジンを吹かすが、まったくスピードが出ない。

「ふわぁ、ふわぁ、ふわぁ!」

彼の叫び声が暗闇に響くが、車の中も絶叫の嵐である。

「先行く!」

と車を運転していた友人は、そのままバイクの彼をほったらかしてスピードを上げたのである。

その時、彼女はうずくまってしまい、もうそれを正視することはできなかったという。

「ふわぁ、ふわぁ、うわぁ!」

という彼の絶叫もだんだん遠ざかり、彼は見えなくなった……。

先に待ち合わせる約束をしていたアパートの前で、バイクの彼を待っていたが、一時間たっても戻ってくる気配がない。皆は、どうしよう、どうしよう、と相談していたが、もう足がすくんでしまってどうしようもない。そしてとうとう警察に届けたのである。

「絶対に、信じてください。本当なんです」

と、その状況を説明するが、もちろん警察は信じてくれない。だがとにかく彼が帰ってこないのは事実だからと、パトカーに乗って、警官と一緒に現場へつくと、はたして彼はいたのである。

闇の中、あの笹藪の中で、バイクを横倒しにして、そのバイクのタンクの上に座って、彼は笑っていたのである。肩をくりくりと振りながら、へらへらと。

「それでその後、彼はどうなったの」とE君たちは尋ねたが、彼女は黙って席を立って行ったのだという。

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