これは、友人のお母さんの話である。
真夜中、強烈な頭痛で目が覚めた。
(頭が痛いな、なんでやろか……)
その頭痛は尋常ではない。起きて薬でも飲もうとするが、まったく起き上がれないのだ。
頭が重くて持ち上がらない。そう、それはまさにその重いという言葉がぴったりで、頭が枕にどんとついたまま動かない。
「うーんっ」
と全身力を込めて起きようとするが、首筋と背中が浮き上がるだけでやはり頭が上がらない。頭を左右に振ろうとするとまた強烈な頭痛が襲ってくる。
「なんでこんなに、頭が重いのやろう……」
と、ぽつりと独り言をもらすと、
「私が乗っているからや」
という声が顔の上でした。
その瞬間に長い髪をだらーりとたらした白い着物を着た女が暗闇に浮かび上がり、自分のおでこの上につま先立ちしていて、寝ている彼女の顔を覗き込んでいるのである。
「わぁーっ」
と頭を搔きむしると、ふっとその女も消えて、その瞬間に頭痛が噓のように引いたのである。
ただ、しばらくの間、おでこにつま先が乗っていた感触が取れなかったという。