満願寺の小僧火(長野県安曇野市) | コワイハナシ47

満願寺の小僧火(長野県安曇野市)

つつじの名所として有名な穂高栗尾山の満願寺は、心霊スポットとしても有名だ。

霊験あらたかとされる寺社仏閣にそのような噂が立ってしまうのは、妙なことに思えるが、満願寺のように山深い場所にある場合、決して珍しいことではない。

特にこの寺には、おどろおどろしい描写の「地獄極楽変相之図」という大きな絵が飾られており、また参道入り口の駐車場近くには微妙橋という太鼓橋が掛かっているが、その下に流れる急流の沢は三途の川といわれ、橋を渡ることで彼の世と此の世を往還できると伝えられている。その辺りのいわれも噂に影響を与えているのだろう。

もっともこの寺は、安曇野一帯で野盗を繰り返した悪名高い八面大王を討伐した坂上田村麻呂将軍が戦勝を祈願した場所とも伝えられ、また江戸期には十返舎一九が逗留し、『続膝栗毛』を記したという由緒ある古刹(歴史がある寺)である。

ただ古くには、下記のような出来事があったと伝えられている。

いつの時代か、満願寺の北側に古びた小さな祠があった。

古いにしえから、この寺の住職は毎夜丑三つ時に、この祠に御灯火を奉じなければならないというしきたりがあった。しかし、祠までの道は薄気味が悪く、普通の度胸の持ち主ならとても毎日できることではない。ある日、当時の住職がこの役目を十二歳になる小坊主に押し付けてしまった。

小坊主は最初のうちは大事な役目を任されたことを喜んだが、いざ本堂を出て祠に向かって歩いていくと、心細くて仕方がない。周囲は木々に覆われ、ただでさえ暗い道の闇をさらに色濃くしている。

時折聞こえる野鳥の声や、狐や野犬たちの光った目が木立の間からいくつも見え、毎晩身をすくめながらお勤めをしていた。

そして、ある雨の晩、ついに小坊主は無断でお勤めを休んでしまった。

そのことを知った住職は怒り狂い、

「御灯火をなんと心得ていたのかッ! お前のせいで千年続いた御灯火が絶えてしまった! この寺も、もう終わりじゃ!!」

住職は抵抗しない小坊主を激しく打ちのめし、杉の木にくくりつけ、ついには殺してしまった。そして、祠の近くの老杉の根元に小坊主を埋めると、簡単なお経を唱えて、なにくわぬ顔で本堂に戻った。

小坊主がいなくなった今、しかたなく自分で御灯火を奉じようと、とぼとぼと住職は暗い道を祠に向かって歩いていった。

すると、ちらちらと青白い炎が杉の木立に漂っており、そのすぐ下に恨みがましい顔をした小坊主が立っているのを見て、住職は腰が抜けるように倒れこんだ。そこは小坊主を埋めた、まさにその場所だったからである。

青い炎はゆらゆらと揺れながら動き、倒れている住職の真上を飛んだ。

這うようにして本堂に駆け込んだ住職は、そのまま布団を頭までかぶり、空が明るくなるのを待った。

とてもじゃないが、ここにはもういられん──。

夜明けを待たず、住職は寺から逃げ出してしまったという。

その後も、怪しい火の玉は夜毎に現れ「満願寺の小僧火」と言われて、ひとびとから恐れられたそうである。

嘘か誠かわからないが、このような話が伝承として残っていることも、満願寺が心霊スポットとされている一因なのかもしれない。

また、境内の草木や石を持ち帰ると三代の祟りがあるという言い伝えもあり、そのことが寺の敷地の立て札に記載されていることも興味深い。

もっとも、この寺は水子供養の寺としても知られているので、遊び半分の気持ちで訪れることは避けたほうが賢明だろう。

シェアする

フォローする