ハンゴウ池(長野県下高井郡) | コワイハナシ47

ハンゴウ池(長野県下高井郡)

長野県から群馬県の草津へと向かう県境に、白根山という活火山がある。

平成二十九(二〇一八)年一月二十三日に発生した噴火によって、スキー訓練中の陸上自衛隊員が一名亡くなり、他十一名が重軽傷を負うという惨事があったことは記憶に新しいところだ。

その山の頂上付近に小さな池があるという。

太平洋戦争時、行軍してきた兵隊たちが、その池の傍で炊事をすることになった。

すると、ひとりの兵士が飯盒をなくしたことに気づいた。

まさか上官に報告できるわけはない。それに正直に言ったところで新しいものを与えられるわけがなかった。罵られ、殴られるのが関の山だ。

自分だけもう白米は食べられないのかと悲観した兵士は、飯の時間を待たず、他の者たちの眼を盗むようにして、池に入水してしまった。

それ以来、夜になると池のなかから、

「はらへったー、はんごうねえー、はんごう、はんごうねえか──」

死んだ兵士の、すすり泣きながら呟くような声が聞こえるのだそうだ。

それからというもの、そこは「ハンゴウ池」と呼ばれるようになったという。

このような理由で死を選んでしまうことは、現代の感覚ではとても考えられないが、戦時中は普通の出来事だったのかもしれない。

池から聞こえる声よりも、本当に恐ろしいのは、このような時代があったことではないだろうか。

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