住宅街の火災の怪(岡山県某市) | コワイハナシ47

住宅街の火災の怪(岡山県某市)

勘の鋭い人に時々出会う。

いつもと殆ど変わらない日常の一コマ。

しかし、風景・空気・その他にも様々なリズムが、ほんの少しだけズレている。

そのズレを敏感に察知する能力こそが勘、ひいては霊感と言われるものではないだろうか。

私の親戚の友人のJさんは生まれつき勘が鋭く、事前に危険を察知することがあった。

大きく天気が崩れることや親類の訃報、地震等、様々なことが起こる数日前に、なんとなく五感で感じとることができたそうだ。

その事を家族に伝えると、兄と姉だけではなく、父と母、その祖父母も所謂〝視える人〟だった。

ただ、彼自身は、それまで幽霊というもの自体は視たことはなかったのだが……。

これは、彼が予知能力に目覚めたきっかけの話だ。

ある日、彼は小学校からの帰り道に岡山県某所の近所の家から黒い煙が上がるのを見た。

火事だ。その家まで走る。だんだんと焦げの臭いが強くなる。肌にチリチリと粘り気の強い熱がまとわり付いてくる。ここだ。

しかし、その家に着いてみると何も燃えてはいない。

家々は静かに立ち並んでいる。

帰宅後、家族に「今日○○さんの家が燃えてなかったか?」と聞いたが、○○さんの家を含め、近隣では火事など無かったそうである。

自分の勘違いかと考え直して、その日は眠りについた。

数ヶ月後、あの日の事を忘れかけていた時、学校の帰りに兄が走ってきて、「急いで帰るぞ! あれはダメだ……」と訳の分からないことを言っていたので「どうした?」と訊きかえす。

すると、兄は「お前が言ってた家! 今燃えてる!」と彼の腕を引っ張りながら、大声を上げる。

彼は好奇心に負けて、兄の腕を振り払って○○家まで行ってみた。

野次馬を掻き分けながら現場に近づいてゆく。だんだんと焦げ臭さが強くなる。肌にチリチリと粘り気の強い熱がまとわり付いてくる。

あの日と同じだ。

家は、大きな火柱を上げながら燃えていた。

中からは悲鳴も聞こえて、まさに地獄の様相である。

しかし、そんなことがどうでもよくなるぐらい、彼は違う光景に目を奪われていた。

女だ。

真っ赤に燃え上がる○○家の屋根の上で、女が炎に包まれながら笑っていた。

「○○はあたしの! ○○はあたしの!」

と、大声で叫びながら笑っていた。

唖然としながら見ていると、走って追いかけてきた兄が、

「見るな、来るぞ!」

と、彼の目を塞ぎ、彼はそのまま家まで連れて帰られた。

数年後、その時の事をJさんの両親が彼に事実を伝えた。

「○○さんとこ、旦那さん浮気してたみたい。多分あんたが見たの、その浮気相手じゃないかな。旦那さん、久しぶりの平日休みでたまたま家に居たみたいで、あの火事で亡くなったのよ。旦那さんだけ丸焦げで……」

この言葉を聞いた時、彼はもう一つ、あの笑う女の言葉を思い出していた。

女は「向こうなら誰も邪魔しない。あなたとずっと……」と涙を堪えるような声で言っていたのを。

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