探し物 死体がない・・・死体がない・・・(岡山県瀬戸内海市) | コワイハナシ47

探し物 死体がない・・・死体がない・・・(岡山県瀬戸内海市)

岡山の瀬戸内市に牛窓という地区がある。牛窓は瀬戸内海に面する港町を中心に形成されており、海に沈む夕日は絶景で「日本のエーゲ海」と呼ばれるほどに美しい。他にもカップル同士で鳴らすと幸せになれると言われる「幸福の鐘」や、オリーブを楽しむ事が出来る「牛窓オリーブ園」というスポットもある。

だが、そんな風光明美な牛窓の裏には、ある恐ろしい現象で悩んでいる家族が居た。これはその現象に今現在も悩まされている家族に聞いた話だ。

この話はまだ牛窓町が二〇〇四年に合併され、瀬戸内海市となる前に遡さかのぼる。その件の家には祖母、両親、そして私の同級生であり、この話を提供してくれた一人っ子の友人Aを合わせた四人が暮らしていた。家は築五十年を越える古い木造建築の二階建てで、Aの部屋は二階にあった。家族の関係は良好で、Aが反抗期だった事を除けば当時は何の悩みも抱えてなかった。ある日を迎えるまでは。

ある夏の日のこと、サッカー部だったAがクタクタになりながら帰路に着くと、二階の自室からガサゴソと何やら部屋を物色している音が聞こえてきた。

(母さんがまた勝手に入って掃除でもしとるんかな)そう思ったAは勢いよく階段を駆け上がって扉を開けると、

「また勝手に入っとるんか! 出て行けっちゃ!」

当時反抗期だったAは多少粗めに声をかけた。

すると、そこには母親ではなく祖母がいた。

祖母は電気も付けていない真っ暗な部屋の中でAの声に反応する事なく、タンスや引き出しを開けっぱなしにして何かを探している様子だった。

めちゃくちゃに荒らされた部屋の事はもちろんだが、足が衰えていた祖母が二階に上がり、目の前でしっかりと立ち上がっている事にAは驚いた。

「おばあちゃん、おばあちゃん! 何しとるん? 何か探し物?」

「し……いが……い」

おばあちゃんは何かブツブツとつぶやいていた。

「えっ、何て?」

「し……いが……い」

小さな声で聞き取れなかった為、Aが耳をおばあちゃんに近付けると、

「死体がない……、死体がない……、死体がない……」

一瞬でAの全身に鳥肌が立った。

Aは一階に助けを求めるために階段を駆け下りると、キッチンに母親がいた。

「お母さん! おばあちゃんが俺の部屋で死体探しとる!」

「はぁ、あんた何言っとるん?」

「いやホンマなんじゃって!」

本気で焦っているAの様子を見て、只事でない事が起きていることをやっと理解したのか、母親はまず居間の横にある祖母の部屋に向かった。

ドアが開いた音が聞こえるや否や、

「おらん! おばあちゃんがおらん!」

と再びAの元に戻って来た。

「じゃけん言ったろ? おばあちゃん二階だって!」

「でもおばあちゃん、立てれんで?」

「ほんなら、見てみぃや!」

お母さんは無言で頷くと二階に向かった。

Aもその後を追うと、お母さんは扉の開いたAの部屋の前で尻餅をついていた。

「おばあちゃんが立っとる……」

Aは母親を無理やり立ち上がらせると、部屋の中まで背中を押した。

「おばあちゃん、何でAの部屋におるん?」

母親が声をかけても案の定祖母は何も反応せず、ボソボソ呟きながら部屋を荒らし続けた。

「なぁ、おばあちゃん! どうしたん!」

母親は祖母の小さな身体を後ろから掴み、無理やりこちらに振り向かせた。

「おばあちゃん、何探しとるん!」

すると祖母はしっかりと目を見開き、母親を恐ろしい形相で睨み付けると、

「死体じゃぁ、死体探しとるんじゃぁ! おどれぇ邪魔すんなぁ!」

その声は野太い男の声で、口調、表情、どれをとっても祖母のものとは到底思えなかった。その時の何かに取り憑かれたように暴れる祖母の姿をAは未だに忘れられないと言う。

その後、仕事先の父親に電話をかけて、父親を含めた三人で再び二階を確認すると、祖母は力尽きたのか部屋の中央で倒れていた。

その後、意識を取り戻した祖母に話を聞いても「覚えていない」と本当に記憶にない様子だった。

祖母の奇行はその時だけで終わらず、目を離すとそれから何度もAの部屋を荒らしてしまうので、家族は苦渋の選択で祖母をベッドに縛り付けた。

だが、その選択は後に新しい恐怖を生み出すきっかけとなった。

ある日のこと、サッカー部の地区大会が近いという事もあり、Aはいつもよりハードな練習をこなして帰路についた。連日の練習で疲れが溜まっていたのか、泥だらけの練習着のまま居間のソファーで寝てしまうと、誰かに揺さぶられて目を覚ました。目を開けるとそこは眠ってしまった居間ではなく、なぜか二階にある自室で、揺さぶって起こしたのは心配そうにAの顔を覗き込む母親だった。

「何で俺は部屋におるん?」

「やっと目を覚ました……」

「どういう事?」

「お母さんが仕事から家帰ったら二階から物音したけん、またおばあちゃんかなと思って部屋入ったら、あんたがおったんよ。なんじゃAか。と思って安心しとったら、部屋がめちゃくちゃで」

Aは悪い予感がした。

「A! 何しとるん! って肩叩いたら『死体がない……、死体がない……、死体がない……』って、おばあちゃんみたいに」

Aは祖母同様何も覚えていなかった。縛り付けられ身動きが取れない祖母では死体が探せない。そう考えた「何か」が次のターゲットをAに変えたとしか思えなかった。

連日続く怪異に耐えられなくなったAと両親は、同じ地区にある母方の祖父母の家に引っ越した。祖母も一緒にと説得したのだが

「私はここで生まれて育ったんじゃ。私はいい」

と、頑なに祖母は一人家に残る事を決めた。

毎日何度か母親が祖母の様子を見に行くのだが、やはり片づけた二階の部屋は荒らされてしまい、そういう事が何度も続くので部屋の掃除も祖母の引越しの件も諦めてしまった。それからAは何者かに身体を奪われるといった事がなくなったので、やはり、あの家が怪異の原因なのだろう。

一度藁にもすがる思いで除霊師に頼んだのだが効果はなく、何がきっかけで、なぜある日を境にA宅が恐ろしい出来事に見舞われてしまったのか、何も分からずじまいのままなのだそうだ。

数年後、Aはまるで忌まわしい思い出に蓋をするかの様に、地元から離れて広島の大学に進学した。卒業後は広島県内の飲食店の店長に就任し、忙しい毎日を送っている。Aに家の事を聞くと、祖母は八十八歳になり、元々悪かった足はさらに悪化してしまい寝たきりになってしまった。にもかかわらず、家に取り憑く何かは未だに探し物を探しているのか、部屋が片付く事はないのだという。

「死体がない……、死体がない……、死体がない……」

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