旧志戸坂トンネル(岡山県英田郡 西栗村) | コワイハナシ47

旧志戸坂トンネル(岡山県英田郡 西栗村)

岡山県と鳥取県の県境にあった「旧志戸坂トンネル」は、旧国道三百七十三号にあり、昭和九(一九三四)年に開通した。

現在は新しい志戸坂トンネルが開通し、旧志戸坂トンネルは閉鎖されてしまった。

完成当時としては、全長五百六十五メートルの長さの旧志戸坂トンネルは珍しく、同時に長さのせいか、色々な霊の噂があった。

岡山市に住む美月さんの話である。

「私達がそこに行ったのは、彼と友達が夜中に肝試しに行こうって盛り上がったんで、行ってみたんですよね。そしたら……」

美月さんは彼氏と友達の三人でその旧志戸坂トンネルに入る事にした。

当時、トンネルはもう閉鎖されていたので、入り口は金網で封鎖されていた。その金網はを誰かに破られていて、そこに侵入するのが肝試しの常道だったようだ。

車では入れるはずもないので、近くに止めて、内部を懐中電灯で照らしながらトンネル内に入る事にした。

中は薄暗く、カビ臭い匂いと少し動物の死臭のような匂いが漂っており、

「私、やっぱり入るの嫌だ」

と美月さんはごねてしまい、結局、中には彼氏と友達の男二人で入る事になった。

「美月、中をライトで照らしといてくれん?」

怖いながらも、トンネルの中に入るぐらいなら外にいた方がマシと、取りあえず懐中電灯で中を照らしていた。

夜だったので寒さもこたえ、震えるようにしてライトを照らし続けていたという。

「うあああああ……」

妙な唸り声が聞こえた。犬というか獣のような声だった。

「大丈夫? 変なのがおるんじゃ?」

とトンネル内の二人に尋ねたが、反応がなかった。しばらくすると、

「わあああ!」

と彼氏が真っ青になって出てきた。金網から出る時、服が引っ掛かって転倒したので助けてあげた。その拍子にライトが落ちて、電気が点かなくなった。

真っ暗の中、月明りだけが頼り。携帯電話のライトを彼氏が付けて、やっと周りが見えた。怖くて仕方がない美月さんは、すぐにでも帰らないと良くないことが起こりそうな気がしていた。

「早く帰ろうよ、友達は?」

と聞くと、その友達は特にビビりもせずに普通に出てきた。

「何も無かったのに、こいつがビビりすぎなんじゃ」

その友達は平然と言った。

トンネルからの帰り、ほとんど彼氏は無口のままだった。彼の友達を送った後、彼氏がやっと話し始めた。

「お前、さっきトンネルで何で大丈夫って聞いたんじゃ?」

「変な声が聞こえたんよ、獣みたいな」

「中では何の音もせんかった、けど」

「けど、何じゃ?」

「友達がさ、お前気づかへんかった? 顔、変になってたやろ」

今日会ったばかりで、どう違うのかわからなかったが、彼氏は言った。

「元々丸い顔なのに、顎がだらんと伸びてたやろ」

そして、携帯で撮ったトンネル内の写真を見た。

友達の顔はひどく長く写っていた。彼氏の顔の長さの二倍近くになっていた。

「けど、さっき車の中じゃ普通じゃなかった?」

「トンネルの中だけじゃったと思うが、何か変な獣の霊が憑いたような気がしたんじゃ」

そう言って、その彼は口をつぐんだ。

後になって、その彼の友達がどうなったかは知らないが、写真を撮った携帯電話は次の日に故障して、写真も何もかも消えてしまったという。

携帯電話を扱う会社も、故障の原因がわからないと首をひねっていたそうだ。

「あれから一切あのトンネルには行かないようにしてます。あの顔が伸びた友達の写真が、悪霊を携帯電話にとりつかさせたような気がするんですよ。だから壊れたんじゃないかな。多分、私が聞いた獣みたいな声は、その友達に憑りついた低俗霊なんじゃないかと思います」

と、美月さんは恐ろし気に話してくれた。

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