道真と桃太郎伝説(岡山市 犬島) | コワイハナシ47

道真と桃太郎伝説(岡山市 犬島)

岡山県の南東部の宝仏から約二・五メートルほど行った沖にある場所に「犬島」がある。この辺りの沖合には島が六つある。犬ノ島、地竹の子島、沖竹の子島、沖鼓島、白石島と犬島本島だ。人が住んでいるのは犬島だけで。約百人弱が周囲三キロメートルほどの島に暮らしている。

ここはかつて精錬所や採石場があり、岡山城や大阪城の石垣を作るための石が切りだされたり、明治時代には大阪築港にも島の石が運び出された。多いときは島内に数千人が暮らしていた時代もあった。

当時のその痕跡が、今では歴史的な遺構となって当時を偲ぶ観光名所にもなっている。キャンプ場や海水浴場としても人気が高い島だ。

この島の歴史に、菅原道真が関係していることを知る人は少ないかもしれない。天満宮があるのだ。もちろんあの道真公を祀ってある。

建立は一四六九年と古く、元々は犬ノ島にあったものを一八九九年に犬島へと移転したものなのだ。港から徒歩十五分の場所に所在する。

道真が朝廷内の陰謀で左遷され、大宰府に下向するときの話だ。

真夜中にこの島の近くを船で通りかかると、急に潮が高くなり、船が揺れて風や波にのまれそうになった。危うく遭難する! という時であった。

(もう、ここで海の藻屑になってしまうかもしれない……)

道真は青ざめ、すでに死を覚悟していた。当時は現代の様に大型船ではなく、小舟のようなもので海を渡っていたので、海難事故も多かった。目的地に行きついて、そこで果てる者も多く、海を渡るということは覚悟の旅でもあったのだ。

「ワン! ワン!」

不思議なことに、この大暴風雨の中、犬の鳴き声が聞こえた。導かれるように、声のする方へ向かうと、そこには大きな島が見えた。

その目の前には、犬の形をした巨石があるではないか。

(これは、わしの犬とそっくりじゃ!)

道真は愛犬を思い出し、涙を流して石を拝んだ。犬は船旅に連れていけないことから、もう生きているかどうかすらもわからない。離れる時はいたく悲しかった。

島に漂流し、しばらく波海が落ち着いてから船を出すことになった。その時も、愛犬の鳴き声がする。

「クウーン、クウーン」

それは島全体を覆うような寂しそうな鳴き声だった。道真は、京に置いてきた愛犬のことを思い出し、何としても連れてくればよかったと後悔をした。

そして、犬島本島の西にある犬ノ島の山頂に犬神明神を祀った。

そのおかげか、後の航海では問題が発生せず、無事福岡の大宰府に到着することができた。道真の犬の霊魂のおかげで、たどり着けたと言ってもいいかもしれない。

今もそこには高さ約三.六メートル、周囲が約十五メートルもある巨岩があり、毎年お祭りを欠かさない。道真を祀る天満宮として今も祀られているのはそのためである。

ここ犬島は、桃太郎伝説の中に登場する『犬』の象徴とも言われている。桃太郎発祥説は全国にあるのだが、最も有名な岡山には、こうした島文化があるからと言われている。かつての犬島は、海賊の住処があり、海賊たちは讃岐に現れては強奪を繰り返し、讃岐の民衆をいたぶり、苦しめた。

そこで桃太郎が登場し、きび団子を与えて犬を家来にしたと、昔話では言い伝えられているが、その犬は犬島の民を象徴したものだと言われている。犬島の民はみな航海術に長けた船乗りが多かった。その力を借りて海賊退治をしたという伝説がある。

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