お初天神の幽霊(香川県) | コワイハナシ47

お初天神の幽霊(香川県)

Nさんの出身は香川県。金比羅山が近くに見える村である。

彼は中学生の頃から二十歳前後になるまでの間、夜中になると、しきりに金縛りにあっては若い綺麗な女性の幽霊を見ていたという。

髪の長い、目鼻立ちの整った色白美人。それこそ水もしたたるいい女、なのだそうだ。

夜、寝ていると金縛りにあう。同時に手になにか女性の身体の感触が伝わる。それがその女性のお腹であったり、胸であったりする。見ると、そこに女性がいるというわけだ。

様相が出てくるたびに違う。

ある時は、真っ白い着物を着て現れたかと思うと、キンキラと光り輝くような金色の着物を着て現れる。あるいは、髪をザンバラにしてボロボロの着物姿の時もある。いずれも和装ということでは共通している。その女が、枕元に楚そ々そと座っている時もあれば、立っていることもある。一度などは物凄い形相で天井にはりついていたこともあったという。

最初にそれが現れた時、おばあさんに「こんな女の人がいたよ」と言ったが、「ああ、それはなにもしないから大丈夫だよ」と言われて、そのうち慣れもあってか、その女が出ても別段怖いという感じはなくなったのである。

ところがそのうち、その女性が性的な交渉を求めてきだした。思春期であったNさんはいつのまにか、その女性に妙な恋心を抱きはじめた。

そんなある日、おばあさんがNさんの顔を見て「あんた、近頃変やな、ひょっとしてあれか、あれはこの世のもんやないから、あかんで」と言う。その時、初めてNさんの全身にゾクッと、恐怖心がよぎったのである。

その夜は、女の出る時間になると押し入れに隠れていた。

女は、うらめしそうにからの布団をながめていたという。

ところでこの幽霊、Nさんのお父さんも幼少から青年期にかけてよく見たのだそうだ。

やはり、髪の毛の長い、出てくるたびに着物の柄も違う、そのうち性的な交渉を求めてくる美女の霊。

お父さんの話によれば、これは文楽『曾根崎心中』で知られるお初天神の界隈に出る、有名な幽霊なのだという。Nさんのお父さんは、以前大阪のお初天神近辺に住んでいて、そこで夜な夜な美女の霊に襲われたのだそうだ。近所の人たちは昔からそこに、その女の幽霊が出ることを知っていたらしい。

「わしは、その女はもう卒業したんやが、今はお前んとこに出てるのか」と、お父さんは言う。

しかし、ここは香川県の片田舎。なぜ、そんなものがこんなところに、しかもNさんのもとに出たのか、不思議でならないという。

Nさんは今、大阪に住んでいるが、もうその女は卒業したのだそうだ。

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