首吊りの木その一(兵庫県) | コワイハナシ47

首吊りの木その一(兵庫県)

だいぶ昔の話である。

兵庫県のある温泉町に、ひとりの老いた樵がいた。

老人は毎朝、裏山に登って仕事をするのが日課である。

ある日、この老人が山から戻ると、家の者に妙なものを見たと言う。

いつもの山道を行くと、途中に立派な大木があるのだが、この樹に白いものがいっぱい咲いていた。花でも咲いたか、実でもなったのかと見るとそんなものではない。

その白いものは白装束の小さな人であったという。

その大木の枝のあちこちに、蒼白の顔をした白装束の人間が、まるでてるてる坊主のようにぶらんと、それもすずなりにぶら下がっているのだ。

それが山での作業中、ずっと見えていた。

「まさか、そんなことはあるまい、そんなことがあるはずがない……」

と思って山を下りてきたが、正直あんな恐ろしいものははじめて見たと、盛んに気味悪がった。

翌日、老人はいつもどおり裏山に登っていった。だがやっぱり動揺していたのか、この日に限って弁当を忘れて行ったので、気づいた家人が弁当を届けようと山を登った。

すると、不思議なことに、昨日話題になっていたあの大木がどっかりと倒れている。

……大きな幹が、真っ二つに折れていて、たおやかな青い枝葉が地面にどっさり倒れている。そして、ぱっくり折れ曲がった木の幹の中に、その老人が頭を突っ込んでいた。

「その前の日に、白い人間がぶら下がっているのを見たとか言うとったが、そのことをしゃべったのがいかんかったのやろうか……」

と、葬式の場で、家人はそうポツリと漏らしたのだという。

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