すっちゃ、すっちゃ(宮崎県) | コワイハナシ47

すっちゃ、すっちゃ(宮崎県)

ライターのTさんが宮崎県に取材に行った時のことである。

その日、Tさんは日向市内のホテルに泊まったが、この造りというのが、廊下の両側に格子戸がズラリと並んで、格子戸を開けると障子戸があって、その奥がベッドのある洋室という、変わった間取りであったという。

朝、チェックアウトしようとエレベーターに向かって廊下を歩いていると、ある部屋の格子越しに、人影が動いているのを見たのである。

格子にはガラスは?っていないので、その人影が障子越しにいやにはっきり見えている。しかもその障子が少しばかり開いている……。

Tさんはなんか雰囲気が変だ、と思って持ち前の好奇心で中をそっと覗のぞいてみた。

部屋の中にやはり人がいた。

浴衣を着て、先の尖った笠をかぶったひとりの女の人。それが囃子もなにもない無音の状態の中で阿波踊りを一心不乱に踊っている。

すっちゃ、すっちゃ、と床と足袋の擦れる音が、はっきりと耳に入る。

朝の十時頃、日のさんさんと照るホテルの部屋の中。

妙なものを見てしまったなとちょっと後悔しながらフロントまで下りた。

フロントでチェックアウトの手続きをしていると、おそらくはここの子供だとTさんは思ったらしいが、五、六歳くらいの女の子が目をこすりながら階段を下りてきて、

「あのおばちゃん、また出たよ」

と言う。

それを聞いた瞬間、フロントの女性が、サッと顔色を変えると、ダダッとフロントを出てその女の子の腕をつかみ、サッと奥の住み込み部屋にその子を連れ入ってしまったのである。

(はははっ、やっぱり……)

と、その時思わずTさんは苦笑してしまったという。

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