赤いオープンカー(静岡県浜松市) | コワイハナシ47

赤いオープンカー(静岡県浜松市)

これは、大阪の俳優養成所に通うKさんの七、八年前の体験談である。

当時Kさんは大学生。夏休みに男ばかり四人でレンタカーを借りて大阪から東京へ遊びに行った。その帰りのこと。

浜名湖の近く、東名高速の浜松西インターのあたりを夜中の二時頃通過した。

その時運転をしていたのがKさんで、ほかの三人は助手席と後部座席で寝ていたという。

バックミラーに、ハイビームの光線が入ってきた。この時の道路は車もすいていたのでKさんは一二〇~一三〇キロでとばしていたが、そのハイビームの車は猛スピードでぐんぐんと近づいて来る。その光があまり眩まぶしいので、Kさんは左の車線によけた。するとハイビームの車はあっというまにKさんたちの車を追い越し、ぐんぐんと遠ざかっていく。

が、Kさんはその時、奇妙なものを見た。

最初はバックミラー越しにその眩しいハイビームしか見えなかったが、追い越され際にちらりと見えたのが、真っ赤なオープンカー。Kさんの車を軽く追い越していったということは、時速二〇〇キロ近くは出ていたことになる。ところがその助手席に、真っ赤なドレスを着た女が立っていたのだ。

猛スピードの風を一身に受け、その女の長い髪の毛がぐるぐるとかき乱されている。

その女が追い抜き際、Kさんを見て、ニッと笑ったのである。そしてぐんぐんとスピードを増し、みるみる見えなくなっていった。

運転をしながら、ひとりKさんは疑心暗鬼に陥った。

「えっ、今のはなに?……人形か?いや、人形やないな、人形やったら、絶対飛ばされてるよな、しかも俺見てニッと笑ったもんな……あれは生きてるな、人間やな……立てるか?時速二〇〇キロやで……」

と、思うと怖くなってきた。

次のサービスエリアに車を停めると、友人をたたき起こした。

「俺、こんなもん見たんや!」

と、つい先ほど自分の見たものをそのまま友人に話すが、皆は信じてくれない。

「お前、それ、疲れてんねんで。よっしゃ、俺が運転代わってやる」

と友人に促され、運転を代わってもらってふたたび東名高速を走りだす。

ところがしばらくして、またうしろからハイビームの車が猛スピードでやって来た。

Kさんは、このハイビームは先ほどのオープンカーのものだと直感した。

「これや、これや。このハイビーム、一緒や、絶対これや!」

と叫びだす。

全員が、そのハイビームに注目する。

サーッと、そのハイビームの車が真横を通過し、猛スピードで走り去った……。

確かに見た。

真っ赤なオープンカー。その助手席の上に真っ赤なドレスを着た若い女が直立している。猛スピードの風を顔に受けて、長い髪の毛がぐるぐるかき乱れ、抜き際やはり、ニッと笑う。そしてあっというまに先に行って、やがて見えなくなった。

「見たか、見たか、今の見たか!」

「見た見た見た見た!!」

Kさんたちは近くのサービスエリアに停車し、朝になるまで出発は見合わせ、明るくなってやっと大阪へ向かったのだという。

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