真夜中の集団(兵庫県西宮市) | コワイハナシ47

真夜中の集団(兵庫県西宮市)

今は大阪の出版社の社長をしているUさんが、十年ほど前、京都の取材をしていた。取材が終わるともう真夜中。自宅のある西宮市に向かって車をとばした。

市内に入ったのが夜中の二時半頃。そのまま阪神武庫川駅の高架下を通って、武庫川沿いの細い道へ入った。すると十数人からなる集団が、海の方へ向かってぞろぞろ歩いているのが目に飛び込んできた。この時Uさんは(この堤防沿いの道は一車線なので気をつけんとな)と思っただけで、徐行運転でその集団の横を通り過ぎた。すると、その集団の様子がどうもおかしいのに気がついた。

真夜中の薄暗く細い道。うしろから車のヘッドライトがさすと、何人かは振り返るなり、こちらを見るなりするはずだが、誰ひとりとしてそんな行動を取るものはいない。しかも彼らの服装も妙だ。見ると、全員が男性。昔の軍隊の歩兵のようないでたち。帽垂れのついた軍隊帽、腰からタオルをたらしている者もいる。足元にはゲートルを巻いている。

彼らの真横を車で通る。やはり誰もこちらを見ない。ただ、なにか話し声は聞こえる。が、なにを言っているのかはわからない。

そのまま集団を追い抜くと、すぐ赤信号にかかって停車した。

Uさんは「あの人たち、また来るな」と何気なく思ってバックミラーを見た。

誰も映っていない。

えっ!と思ってサイドミラーを見る。やっぱり誰もいない。

振り返ってうしろを見たが、今来た道に人はひとりもいなかった。

それでもUさんは、あの男たちは堤防から川へでも降りたのかな、と思っただけで別段妙なものとは思わなかったという。

翌日、会社の仲間にそのことを言うと、

「そんな真夜中に軍隊の格好をした集団が、歩くことなんてありませんよ」

「町の方向へ向かっているというならまだしも、真夜中に海へ向かっているのは変ですよ。あそこの浜にはなにもないじゃないですか」

などと言われ、はじめてUさんは、あれは奇妙なものに出会ったのかもしれないと思ったそうだ。

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