こっちにおいで(兵庫県芦屋市) | コワイハナシ47

こっちにおいで(兵庫県芦屋市)

芦屋市の某ショッピングセンターに沿った歩道に、電話ボックスがあった。

この電話ボックスは呪われているという噂がある。ここにはよく車が突っ込んでは大事故が起こるからだ。事実何年か前、大型ダンプがこの電話ボックスごと内輪差で人を巻き込んだという事故もあった。事故のたびにこの電話ボックスは壊れるが、いつのまにか修復されているので、場所柄よほど利用者の多い電話だったのだろう。

ある時、友人のTさんがここで電話をかけようとした。プッシュボタンを押し終えるとすぐ、呼び出しコールの鳴る間もなしに人が出た。

「あっ、もしもし……」

と言いかけると、弱々しく細い声で、

「こっちにおいでっ」

と言う。

それはかけようとした相手の声とは違う。

ゾクッとして、思わず顔を上げると大型トラックがこっちに向かって突っ込んで来る。

「わあっー!」

そのままボックスから逃げようとしたが、ぶつかる間際のところでトラックは急停止をして、なんとか無事だったという。

電話の声の主は、男か女かはっきりは覚えていないが、若い人の声だったという。

そんな体験談をTさんが友人たちにしていると、

「えっ、やっぱりあの電話は変なんですね……」

と、ひとりの女友だちがこんな話をした。

その女性が、車でその通りにさしかかった時、職場に電話連絡をする時間だと気がついた。その時、ちょうどそのショッピングセンターの前の電話ボックスにさしかかった。ここを過ぎると当分電話ボックスはない。少し道の先で車を停めて、出ようとした時、チラリとバックミラー越しに電話ボックスを見ると、中に人が入っている。

髪の長いジーンズ姿の女性である。

「あっ、人が入ってるわ」

と思ってしばらく車の中で待っていたが、バックミラー越しに見えるその人はなかなか出てこない。

「長い電話だわねぇ」

と、振り返ってそのボックスを見ると、誰もいない。

「あれ?」

バックミラーにあれほどはっきり映っていた女が、かき消えたようにいなくなっていた……。

彼女は別の電話ボックスを捜すことにした。

今はもうそこには電話ボックスはないと聞く。

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