四月の雪(兵庫県神戸市) | コワイハナシ47

四月の雪(兵庫県神戸市)

神戸の新開地でクラブのママをやっているSさんは、新婚ホヤホヤ。

最近は、夫が会社の帰りにそのクラブに顔を見せ、軽くお酒を飲む。そしてふたり一緒にタクシーで帰るというのが日課となった。

その夜も軽くお酒を飲んだ後、ふたりタクシーに乗り、北区のアパートへ向かった。

すると、四月の中頃だというのに雪が降ってきた。

「あれ、そう寒くもないのに雪とは珍しいですな」

と、運転手も驚いている。

ところがその雪があっというまに降り積もり、街中はみるみる白銀の世界と化した。

こんなことは珍しい。酔いも手伝ってか、夫はタクシーを止めると、雪の中に出ていった。そしてわっと、両手で雪をよせ集めた瞬間、パッと夫がかき消えた。

「えっ!」

と驚いてSさんは夫の名を呼ぶが、返事がない。

「運転手さん、運転手さん!」

と、Sさんは運転手に助けを求めるが、運転手は真っ青になって身体が動かないと訴える。

Sさんは、夫を助けようと夢中で雪の中にとびこんだ。雪をかきわけるうちに、人の手を見つけたので、ずるずるっと引っ張ると夫が出てきた。

「なんだ俺、雪の中に落ちてたのか?」

と、夫はきょとんとしている。

なんだかこの場を早く離れたほうがいいという気になって、あわててタクシーに乗り直し、アパートへと直行した。

朝になって、ふたりであの雪のことを思い出すが、酔っていたのか、どうも雪が積もっていたのはあの周辺だけで、戻った時は雪などなかったような記憶がある。

会社へ行く途中、雪が積もっていたあたりを通りかかったが、あれだけ積もっていた雪の形跡すらなかったという。

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