○○ちゃん(東京都) | コワイハナシ47

○○ちゃん(東京都)

「どこで育て方を間違えたんでしょう。いくら考えても、分からなくて」

関東・某地区に住む阿部淳子さんは、夫と中学三年生の姪の○○ちゃんとの三人暮らしだ。○○ちゃんの両親はすでに他界し、○○ちゃんが三歳のときから叔母である淳子さんが引き取り育ててきた。

「亡くなった姉のためにも、どこに出しても恥ずかしくないよう育ててきました。習い事も、ピアノとバレエに通わせて、コンクールで賞を取ったこともあるんです。姉に似て優秀なんですよ、○○は。勉強も自分から進んでやりますし。本当に根は良い子なんです……」

淳子さんは深いため息をつくと、一か月前の出来事を語ってくれた。

ある休日、淳子さんは○○ちゃんと一緒に、都内にある遊園地に出かけた。高校受験を控え、毎日猛勉強をしている○○ちゃんをねぎらうために、前々から企画していたという。

歴史のあるその遊園地に行きたいとリクエストしたのは○○ちゃんだった。

何でもこの遊園地には、本物の幽霊が出ると話題になった『お化け屋敷』があるそうだ。

「でもお化け屋敷には、すぐに入らなかったんです。夕方になって暗くなってからのほうが、幽霊が出る確率が上がるって、あの子がいうもんですから。身体は大きくなったけど、中身はまだまだ子供ねって笑ってたんですよ……あそこに入るまでは」

日が陰ってくるまで、淳子さんは○○ちゃんと一緒に、様々なアトラクションを楽しんだ。○○ちゃんも子供らしく、はしゃいでいたという。

「ずいぶん昔からある遊園地だって○○から聞いてはいたんですけど、驚きました。乗り物も売店なんかも昭和風で、子供の頃を思い出して懐かしかったですねえ」

お化け屋敷には、夕方5時過ぎに入った。

古い日本の屋敷に見立てた施設の中を、扉を開けながら進んで行くと機械仕掛けの人形が脅かしてくる仕組みだ。お経が流れていたり、あるエリアにくると赤ん坊の泣き声に変わったりと、色々と趣向をこらしている。

ただ残念なことに、淳子さんは加齢により暗がりが見えにくくなっていためか、人形たちの顔がハッキリと見えなかった。

「最初からそうでした。割と明るい所に置いてある大きい人形も、顔だけぼやけてよく見えなかったんです。もう年だから仕方ないのかな、なんて考えていたんですけど」

ある部屋の前に差し掛かると雰囲気が一変した。急に冷たい風が吹いてきたように鳥肌が立つ。

その部屋へ入ると、壁一面に沢山の首がない日本人形が飾られていた。先ほどのようにぼやけて見えるのではなく、まるで刃物で切られているかのように綺麗に首から上がなかった。そして真っ暗なはずなのに、人形たちの胴体だけ妙に明るく浮かびあがっていたという。

「あまりにも異様だったんで、つい○○の方を見たんです。そしたらあの子、目を輝かせて人形をじっと見てるんです。興奮してるのか、我を忘れたように人形に触ろうとしてるし」

想像すると背筋が少し寒くなるような話だ。

「私もぞっとしたんです。とにかく早く出ないとマズいと思って。人形に触らせないように○○の手を引いて、逃げるように外に出たんです。○○からは、もっとゆっくり見たかったってブツブツ言われましたけど、仕方なかったんですよ」

○○ちゃんに悪い物が憑くかもしれない、淳子さんはそう感じたという。

それでも悪い予感が拭えなかった淳子さんは、ある日、○○ちゃんが学校に行っている隙に部屋に入ってみた。彼女に何か悪いことが起きてないか確認したかったそうだ。

部屋を物色していると、ベッドの下から見覚えのないカラーボックスが出てきた。淳子さんがおそるおそる蓋を開けてみると。

リカちゃん人形の首、バービー人形の首、シルバニアファミリーの首、その他、幼い頃に買ってあげたぬいぐるみたちの首だけが、綺麗に並べられて入っていた。

「でも、それってとっくに処分した物なんです。○○がもういらないからって、自分で燃えないゴミの日に出してました。だから、あの子が人形の首だけを取って、残りは捨てていたんだって分かったとき、ブルブル震えてきちゃって」

私、こう考えてみたんです。あのお化け屋敷に悪い霊がいたんじゃない。

多分、○○の持っている『悪い気』が、あそこの人形たちに反映したんじゃないかって。

淳子さんは言いづらそうにそうつけ加えた。

因みに、淳子さんが住んでいる地域では、ここ最近、ひんぱんに首を切断された猫の死骸が発見されている。

淳子さんは「あの子じゃないです。そこまで出来る子じゃないんです」と、しきりに否定していたが。

実は、私も以前、そのお化け屋敷を訪れたことがある。

そのため、淳子さんが話してくれた『日本人形が沢山飾ってある部屋』のこともすぐに分かった。

そこには首から上がない人形は一つもなかったと記憶している。(了)

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