勘違い その一 殺人(大阪府) | コワイハナシ47

勘違い その一 殺人(大阪府)

WEBデザイナーの春木さんも、子供の頃から霊をたびたび目撃していた。

「オレの場合は見えたり見えなかったり不安定なんですけどね。でも、はっきり姿が見えないときも、何か白い煙がただよってるなあって、多分あそこに何かいるんだろうっていうのは、よく感じますね」

特に、自殺や殺人事件が起きた物件は、外観を一目見ただけで分かるという。

「やっぱり、煙がもやもや出てるんです。たまに友達と道歩いてるとき、見つけちゃうんですよねえ。で、後から事故物件サイトで調べてみると、ドンピシャリ」

今まで一度も外したことはないそうだ。

そんな春木さんが小学生の頃に体験した話だ。

彼のお父さんの実家は、大阪の某地区にある。当時は夏休みになると車で里帰りするのが恒例だった。

「爺ちゃん家に行くの、オレは苦痛でした。今はそうでもないけど、昔は結構ぶっそうな地域だったんですよ。ヤクザ同士の喧嘩があったり、昼間っから酔っ払いが騒いでいたり。だから子供だけで外出するなって、きつく言われてましたね」

そこでの唯一の楽しみは、お爺さんが連れて行ってくれるお化け屋敷だ。

「毎年、期間限定で本格的なお化け屋敷を開くんです。あんなことがあったから、ショックでどんなテーマだったか内容は忘れちゃったんですけど……」

その年も、春木さんはいつもの通りお爺さんと遊びにいった。

会場の外で順番を待っていると、入口から白い煙がもわもわと出てくるのが見える。

「爺ちゃん、ここいるわ」お爺さんの袖を引っ張りながら、春木さんは興奮を押さえられないように告げた。

「そうか。そないなら止めとくか」

春木さんの力を知っていたお爺さんは、心配のあまり帰ろうと言い出した。

だが、初めてお化け屋敷で本物の幽霊を見られるかもしれないと、気持ちが高ぶっていた春木さんは「絶対、帰らない」と駄々をこねた。

「中におるときは、どないなことがあっても爺ちゃんの手を離すな。約束やで」

根負けしたお爺さんと、そう約束して春木さんは館内へと入って行った。

薄暗い墓地、屋敷の階段のきしむ音、破れて血しぶきがかかっている障子。

ときどき飛び出してくるお化け役のスタッフに驚きながらも、春木さんはお爺さんと手を繋ぎ、ゆっくり歩いて行く。

そして数えて四人目の男性スタッフの後ろに、幽霊が出た。

長い髪の女の霊は、焦点が定まらないような目でフラフラと動き、男性スタッフの肩の辺から顔を覗かしていた。

「爺ちゃん、あれ」怖くなった春木さんは、やっとのことでお爺さんに教えた。

「よし、目閉じてろ」

お爺さんはすぐに恐怖で固まってしまった春木さんを抱え、その場から連れ出してくれたという。

「いやー、あのときはマジで洒落にならないぐらい怖くて。だって、お化け屋敷の中ですよ。もう雰囲気からして不気味じゃないですか。今まで見た幽霊の中でも、一番ヤバかったなあ」

でも、それって勘違いだったんですよね。春木さんの話は続いた。

お化け屋敷の日から二日後。

夕食時、家族揃ってご飯を食べていると、いきなりお爺さんが「はあッ?」と大声を出した。

そしてつけっ放しだったテレビを指さし、春木さんに見てみろと促した。

テレビではニュースが流れ、あのお化け屋敷で視た女の霊が映っていた。アナウンサーは、その女は殺人容疑で逮捕されたと案内をしている。

「もう訳わかんなくて。何で幽霊が捕まるのって、爺ちゃんから説明されるまで、頭の中パニックですよ」

お爺さんの説明をまとめてみると、こうだ。

一週間ぐらい前に近所で殺人事件が起きていた。アパートで一人暮らしをしていた男性が殺されたのだ。痴情のもつれとして警察は捜査していたが、お化け屋敷で働いていた女性が先ほど逮捕された。その女性は、被害者男性の別れた彼女だったという。

そして、お爺さんもあのときのお化け役で出ていた女性を覚えていた。ニュースでも、勤め先の名前まで出していたので間違いないと言っていたそうだ。

「じゃあ、オレの見た四人目のお化け役の男は何なんだって話になったんですよ。でも爺ちゃんはそんな男、いなかったって……」

スタッフだと思い込んでいた男性が幽霊だった。多分、殺された男性の霊だと思うと、春木さんは話してくれた。

「実は女の方に気を取られて、男の霊の顔、よく見てなかったんですよね」

後で、被害者男性の画像をネットニュースで見たそうだが、春木さんは同一人物かどうか分からなかったという。(了)

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