【長編】山の牧場と秘密基地とUFO 後日譚(兵庫県) | コワイハナシ47

【長編】山の牧場と秘密基地とUFO 後日譚(兵庫県)

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山の牧場から戻って十日ほどたった。私は大学のある大阪へと帰り、卒業制作の編集作業にとりかかろうとしていた。そんな時、私のアパートに電話がかかってきた。高校時代の後輩K君である。

牧場の写真 後日譚その1

「おう、Kか、どうした」

「今日、行ってきましたよ」

「えっ?どこへ?」

「例の牧場ですよ」

「牧場?」

どうやらあの牧場の話は地元でずいぶんと広がっているらしい。K君は友人ふたりとその牧場を捜し回って、やっと見つけたのだという。そのK君の友人が電話口に出た。彼とは面識はないが、K君とはずいぶん親しい間柄のようだ。

「僕ね、写真撮ったんですよ」と言う。

「写真?それはやめた方がええぞ」と私は言った。

「大丈夫ですよ。何もないですよ。僕、このとおりピンピンしてますでしょ。別にUFOが飛んできたわけでもないですし。だから写真、送りますよ。現像できたら。ただね、僕ね、今東京で働いているんです。今休みでこっち帰ってきてるんです。それで東京で現像して、すぐそちらに写真送りますよ」と言う。K君に替わってもらった。

「大丈夫か、K。何か気になるようなもの、見んかったか?」

「それがね、牧場についた時、黒い大型の乗用車が二台、牛舎の横に停まってたんです。最初あっ、人がいる、と思ったんですけどね。でも誰もいなかったんです。あの山の中でしょ?車の持ち主はどこへ行ってたんでしょうか。僕らが牧場にいた時は全然姿を現しませんでしたよ」

黒い大型車?まさかあんなに細い山道を……。

一週間たった。K君の友人が送るといっていた写真は届かない。

興味があったがそれも日に日に忘れていった。

二週間、三週間……二カ月ほどたった時、ふとその牧場の写真のことを思い出した。そういえば写真はまだ届かないし、連絡もない。ちょっと気になってK君の家に電話を入れた。

「彼、写真送ってこないけど、どうしてる?」

「それがね、あれから連絡ないんです。僕も心配してたんです。今から東京の下宿に電話してみます」と言って電話が切れた。

五分ほどしてK君から電話があった。

「あいつ、いないんですよ」

「いない?」

「東京の下宿先に電話したら、管理人が出て、その人なら二カ月ほど前に田舎へ帰られました、言うんです。そんな話聞いてないんですけどね。で、そのままあいつの実家に今電話したとこなんですが、この電話は使われておりません、て。なんか胸騒ぎがするんで明日の朝一番にあいつの家、行ってみますわ」

翌日の昼前、K君から電話があった。

家はあるが、もぬけの殻だと。

近所の人に聞いて回った。

すると「夜逃げでもしはったんちゃうか、借金あるとか聞いてたし」ということだった。

「でもね、あいつとは小さい時からの友だちで、何にしても連絡ぐらいあるはずなんですけどね……」

その友人はいまだに行方不明である。

実況電話 後日譚その2

私のアパートに電話があった。高校時代の友人である。彼はその時、地元の小学校の教師をしていた。その彼が電話口でひどく興奮しているのだ。

「おい、今すごいもん見てるんや。UFOの母船や。大きいわ。オレンジ色に光っとる!」

「UFO?ほんまか!」

「今、見てるんや、他の先生たちも見てるぞ!あっ、山の向こうに消えた!」

昼休みの職員室。午後の授業がそろそろはじまるので用意をしていると、ふと窓の桟に腰掛けて煙草を吸っていた先生が、「あっ、あれは何や!」と騒ぎだした。わいわいと職員室の先生たちが窓際に集まった。すると大きなUFOが北に向かって飛んでいる。校長以下、職員室にいた全職員、教師がそれを見た。

その小学校は私も知っている。

北。

あの牧場のある山の方角だ。

空洞 後日譚その三

K君の友人が家族もろとも消えたのは、牧場で撮った写真が原因なのか。二カ月前……。

あの牧場がUFOの基地だとしても、はたしてあんなところにUFOが離発着するものだろうか。あの牧場はカモフラージュなのか。我々を寄せつけない信号なのか。だからいかにも人が嫌悪をもよおす不可解なものばかりがある。基地は牧場ではなくて、その先にある。あるいは山そのものが巨大な基地なのだろうか。映画好きなせいか、いささか妄想にも似たとてつもない考えが頭をよぎる。

そんなことをある友人に語った。

Y君という中学、高校の同期生だ。そしてY君の実家が、その牧場のあった山の麓ふもとにあったのだ。その彼も言う。

「あの山に牧場?知らんな。ああいう田舎やから新しいもんが出来たら、地元の人間にはあっという間に広がるもんやけどな」

その彼に山の空洞説を話した途端、彼の表情が変わった。

「あの山、空洞やで!」

Y君は言う。

地元には「日役」という奉仕作業がある。地域によって内容は異なるが、その地域では初夏を迎えた頃、その山に日役に入るのだという。伸び放題に伸び切った山の雑草を刈るのだ。Y君の父親たちは毎年その山に登っては草を刈る。そして昼になると必ずある場所に行き、弁当を食べる。そこは樹木のない草原の斜面で、地面から奇妙な形をした岩石がにょきにょきと突き出しているのだそうだ。そこで日役にかりだされた地元の男たちは四股を踏んで遊ぶという。踏むと、ズゥーンと山が響く。それが面白いのだそうだ。

四股を踏むと山が響く……。「だからあの山は空洞や。変な岩は鍾しよう乳にゆう石せきちがうかって親父なんか言うとるわ」

ふたたび…… 後日譚その四

五年たった。

あの時スカイラインの運転をしていたF君も、今や小学校の教師となっていた。その彼が、あの牧場がある山の分校に赴任したという。

その夏休み、帰省も兼ねて彼がいる分校へ遊びにいった。その本校が、あの職員室のUFO騒ぎのあった学校である。

分校に着いた。F君が迎えてくれる。ここ数年は児童がいなかったので休校していたが、今年は一年生がふたり入学してきたので、久しぶりに開校したのだという。そんな過疎村なのである。

「あの牧場やけどなあ」とF君が切り出した。この分校から、あの細い山道のある分岐点へは車で五分とかからない。

「今、あそこには経営者が入っていて、はっきりと牧場になってるんや。でな、本校とこの分校の全児童参加のな、夏休みのキャンプ大会にあの牧場の敷地を貸してもらうよう交渉してるとこなんや」と言う。

「いつから経営してるんや」と聞くと、それは知らないが、赴任した時にはすでにそういうことになっていたらしい。ともかくも明日、その挨あい拶さつも兼ねて所長に会う予定だからお前も来るか、という。いったいどうなっているのだろう。真相が知りたい。私は同行させてもらうことにした。

その夜は分校の宿舎に泊めてもらった。

朝、出発の準備をしているとたまたま地元在住のA新聞の記者Nさんがふらりと現れた。

「何かおもろいニュースおまへんか」と言う。

「ありますよ!」とさっそく私は数年前に見た牧場のことと、その経緯をNさんに話した。

「それは面白い。私も同行していいですか」ということになり、三人であの牧場に向かったのである。

同じF君のスカイライン。五年ぶりの道。道幅が心持ち広くなっているように思われた。あのドラム缶もある。そして〝終点〟のドラム缶。これは横倒しにされて道の端によけてあった。

赤い屋根の牛舎が目の前に近づいてくる。あの階段のなかった建物もある。その隣にある平屋建ても。あの巨石はまだあの中にあるのだろうか。

F君の車がその平屋建ての前に停まった。するとその中から作業服姿の中年の男が二、三人出てきた。

「あっ、分校の先生ですね」

愛想がいい。

「今度、うちの子供たちがキャンプでお世話になります」

「いやいや、どうせここら空き地ですんでね、どんどん使ってください」

F君と、ここの所長だという男との会話に別に怪しいところはない。ただ、男の言葉のなまりが地元の人間でないことを物語っている。

事務所に入れてもらった。あの平屋建ての建物である。

はたしてあの巨石は、あった。事務室の真ん中にでんとある。

「この石は何ですか?」と私は聞いてみた。

「さあ、なんやわからんわ。来た時からあるんや。邪魔やからどかそう思ってな、いろいろやってみたんやがテコでも動かん。そやから、しゃない、そのままにしてあるんや」と言う。

「ここはいつから経営してはるんですか?」

「四年ほど前やったかな、町の要請で来たんや」

四年前。私がここに来て間もなくのことである。

「町の要請で?で、それ以前はここは何だったんですか?」

すると所長の顔が曇った。なぜ、そんなことを聞くとでもいいたそうな顔だ。

「いえね、四年前から経営してはるんでしたら、そのわりに建物に年季があるというか……」

すると所長が言う。

「うーん。詳しいことは知らんけどな。七年ほど前のことなんかな、神戸の人やったかな。その人医者やったはってな、道楽でここに牧場やったらしいんや。そしたら経営に行き詰まったんやな。四、五年ほど前に倒産したらしいんや。そんでこんな立派な設備、遊ばしとくのもったいない、言うてな、町役場からなんとか立て直してくれ言うて要請されて、で、わしらここに来たわけなんや」と言う。

この話、私には合点がいかない。

所長の話の様子からするとその医者によって二、三年は牧場が経営されていたということになるが、私がここを最初に見た時は、経営されたという形跡などなかったのだ。しかも役場は、この山には過去にも現在にも牧場は登記されていなかったと言っていたのではないのか?新聞記者のNさんは早速取材をはじめている。

「ここにUFOが出るという噂ですが」

対応している作業員が言う。

「UFOかなんか知らんけどな、あそこの谷にな、オレンジ色の火の玉みたいなもんがしょっちゅう飛びよるで。三日ここに張ってみ、絶対それ見れるで」

「本当ですか!」

「でもな、出るのはUFOだけやない、幽霊が出るんや……」

結局Nさんは幽霊談をたっぷり聞かされたらしく、顔面蒼そう白はくになっている。

「私、先に帰りますわ」と、N記者は先に帰ってしまった。

F君が所長と話し合っている間に、私は事務所から出て、いくつか確認した。まず、あの二階建ての宿舎だ。何人かの従業員がここで働いているということは、あの建物を利用しているはずだ。下はやはりコンクリートの倉庫。今度は石灰の代わりに干草が積み上げられている。上を見る。窓。その向こうに板張りの天井。見た目はあの時のままだ。倉庫の中を見てギョッとした。なんと天井の一部を壊して梯子はしごが架けてある。そしてその梯子はあの二階に通じている。やはり当時この建物には階段が作られていなかったのだ。だから、コンクリートの天井に穴が開けてあって、そこから二階へ出入りしているのだ。そしてこの建物には今も階段はない!

振り返ると赤い屋根の牛舎。

ふと、疑問が起こった。

ここは今は町公認の牧場である。従業員もどうやら五、六人はいる。

しかし、肝心の牛が、一頭もいないのだ。

「あの、ここ牛を飼ってるんですよね。でも牛の姿が見当たらないんですけど」

私が従業員をつかまえてそう尋ねると、「牛?ああ、あん中や」とその従業員は牛舎を指差した。例の赤い屋根の牛舎。その牛舎の周囲は、トタンと木板がビッシリと張り巡らせてあり、中は見えない。窓らしきものもない。

「あの中……ですか?」

「そや」

……牛というものは放牧するものだろう。しかも今は夏の真っ盛り。あの中はおそらく蒸し風ぶ呂ろ状態になっているはずだ。そんな中に牛?しかもそこからは家畜の臭いもしなければ、牛の鳴き声ひとつ聞こえない。さすがに私もこれ以上詮せん索さくすることが怖くなった。

F君が私を呼ぶ。

所長さんがジープを出してくれて、牧場をひとまわりしてくれるらしい。

F君と共に私もジープに乗り込んだ。

はじめて気がついたのだが、この牧場の敷地は大きな半円形をしている。牧草が生い茂って確かに牛を放牧するにはいい土地かもしれない。半円形の土地は崖がけに遮られ、その向こうは鬱うつ蒼そうとした雑木林だ。一周するのに十分もかからなかったろう。やはり敷地を一周する間に、牧場に通じる道は一本も見当たらなかった。つまりここへ来る道は、やはりあのドラム缶のある細い道しかないのだ。

あの建物の資材は、どこから、どうやって運んだのだ?

消えた庇 後日譚その五

「あの山は空洞やで」

そう言った友人のY君に、ある日呼び出された。

Y君の仕事場へ行く。彼は若くしてテレビ番組の制作会社の社長をやっていた。

「この写真見てみ」と十数枚の写真を見せられた。

あの、牧場を撮った写真だった。横倒しになっている道端のドラム缶、あの赤い屋根の牛舎も、平屋建ての建物も、写真に収まっている。

「行ったんか?」

「行った。ほんまにあったな、牧場。もっとも今は地元の人はみんな知ってるけどな。でも気になることがあるんや。お前、二階のない建物の二階、どうやって入ったって言うとった?」

「どうって、以前紙に見取り図を書いて説明したやないか。崖から庇に飛び移って、裏の窓から……」

「ならこの写真見てみ」と一枚の写真を見せられた。あの二階建ての建物の写真。下がコンクリートで囲まれた倉庫で、二階が宿舎。が、何か変だ。

「この建物に間違いないな。俺も見た。梯子があって天井に穴が開いてた。階段は確かにない。それはここ管理してるおっさんに聞いた。でもな、この建物、庇なんてないで」

そんなバカな!

しかしこの写真の建物には確かに庇がない。

「どういうことや」

「だから勘違いしたんちがうか?」

「いや、そんなはずない。俺だけとちがう。Fも、Uも、Kちゃんも証人はおる……」

そんなある日、某テレビ局から電話があった。その牧場を教えてくれという。出演の交渉もしてきた。どうやらこの情報はY君から漏れたらしい。

私は断った。

何かとてつもない闇が、そこにあることを直感していたからである。当時は怪異蒐集やオカルト研究をやっている身でもなかった。それに地元の人たちに多大な迷惑もかかるだろう。テレビ局の交渉は相当粘り強かったが結局断った。後に学校教師F君のところにも電話があったらしいが、彼も断ったという。

ところがその牧場がいつの間にかテレビで紹介されていた。

大阪ローカルの深夜番組で、タレントのMさんがレポーターとしてその牧場に行っている。従業員たちが「おお、Mちゃんやないか」と出迎えている。いろいろ従業員たちに取材している。「二階へ行く階段ないですね」とMさん。「ああ、これな、隣にも建物あったんや。その建物と廊下つながっててな、その隣の建物に階段あったんや。で、その建物だけ壊したら階段なくなってもた。しょうがないんで梯子つけたんや」と従業員。

「結局、怪しいもんなかったですわ」というMさんのレポートであった。

しかしこれはおかしい。

あの建物には間違いなく庇があった。それ自体が独立した建て方だったのだ。それにL字型の廊下は隣の建物とつながっていたという造りではない。ただ、Mさんは番組のコーナーの最後にこんな報告をした。

「でもね、不思議なことはあってね、大きなトイレがあるんですわ。中に入ると男子用の小便器がズラーッと十数個はあったかな。こんな人里離れて、従業員も数人しかおらんのに、これはいったい何なんやろうと……」

私はそんなトイレには、まったく見覚えがないのだが。

満天の星空 後日譚その六

十年ほど前のことだろうか。

私の所属しているタレント事務所の若手タレントたちから、海水浴に行くんですけど一緒に行きませんか、という誘いを受けた。

大阪から何台かの車に分乗して、日本海の海水浴場へと行く。

私が誘われたのには理由があった。そう、みんなは日本海へと行く途中、あの牧場へ行ってみたいのである。

あれからもう何年もたっていたこともあって、承諾した。ただし彼らにはこう言っておいた。

「俺が話した時とは状況はだいぶ変わってるから、おそらくみんなの想像してるようなものはないと思うぞ。きっと普通の牧場になってて、怪しいものは何も無いと思う」と。それが正直な気持ちであった。私が当時見たものはまるで意図的に排除され、地元民の証言も変わってきている。あの牧場はもう十年以上も前、道楽者の医者が経営に失敗したものなのだと。そしてそれは周知の事実だというのだ。

夕方、出発した。真夜中にその牧場に忍んでみようという怖いもの知らずの計画のためだ。

車二台に七人が分乗した。

真夜中にその山に到着した。

「この道に入るんや」

私の指示通りに車が山道に入る。あの時は車一台がやっと通れるという道だったが、今は大型のダンプカーでも通れるほどの道幅になっていた。しばらく行くと鎖があって、〝立入禁止○○牧場〟という立て札がある。しかし鎖は道端にだらりと落ちていて、車はなんなくその場を通り抜けた。

真夜中の山道。街灯もない。明かりは車のヘッドライトのみ。のはずなのだが、今思うとそうでもなかった記憶がある。月でも出ていたのか?ともかく山道を行く。道の印象が違う。広くなっているだけではない。山全体の地形が違うのだ。

しばらく走ると、やがて建物が見えてきた。闇ではっきりとはわからないが三階建てのビルだ。夜中の二時だというのに建物の窓からは煌こう々こうと明かりがもれている。

もう数年前の面影はまったくないように思われた。

塀があって鉄の扉がある。開いてはいるが、何か不気味だ。また真夜中のこと、妙に怪しまれるのも困る。事務所の大事なタレントも預かっている。「もう海へ向かおう」とみんなを促して車に戻った。

「チェッ、UFOでも飛んどらんかな」と誰かが言って空を見上げた。

みんなも夜空を見上げる。

満天の星空がそこにあった。降るような星、とはこのことか。

大学に入るまでは田舎で過ごしていた私も、こんな綺き麗れいな星空を見たのははじめてだった。天の川もはっきり見える。目が眩まぶしいほどだ。

「星空って、こんなに綺麗なものだったんですね」と誰かが溜ため息をついた。

しばらく見とれた。

「さっ、行こうか」と、みんなを車に乗せた。そして山を下りはじめた。

ふっと空を見て仰天した。

「おい、空見てみ!」

えっ、とばかりみんなが空を見る。

「そんな馬鹿な」

今来た道を振り返った。牧場のある山が後方に見える。あの牧場からまだ十分と走っていない。だが、山の上には巨大な雲がかかっているのだ。空も厚い雲がおおっていて星などまったく見えない。

「今、山の上で星空、見てたよな」

「見てた見てた!」

「ということは、晴れてたよな」

「雲ひとつなかった」

「でも、今は曇ってるな……」

「あの牧場のある山、すごい雲がかかってるやん!」

わずか十分もたたないうちに、天候が急変したのだろうか?と、雲の間から綺麗な満月が顔を出した。

今夜は月夜だったのか……?

……待てよ。

月などなかった。あの満天の星空、天の川まではっきり見えた雲ひとつない夜空を見上げた時には、月などなかった。

「月、さっきなかったよな」

誰かがそう言った。

山の上から見上げた空は雲ひとつない満天の星空だったが、月はなかった。しかし今山の麓を走っている私たちの上空には厚い雲がかかっていて、空には満月だけしかみえない。

わけがわからないまま、日の出の頃、我々は日本海に到着したのである。

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